温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯田川温泉 隼人旅館

2017年10月06日 | 山形県
 
2016年晩秋の某日。湯田川温泉の「隼人旅館」で一晩お世話になりました。温泉街のメインストリートに面しており、共同浴場「正面湯」の斜め前に位置しています。


 
 
こちらのお宿は、幕末から明治へ歴史が転換する激動期に、新徴組が一時的な本部を置いたところなんだとか。字は似ていますが、近藤勇や土方歳三の新撰組ではなく、特徴の「徴」の字で新徴組と書きます。両者とも幕末の浪人組であり、新撰組は京都、新徴組は江戸で任に当たったのですが、戊辰戦争の敗北に伴い、庄内藩預かりだった新徴組は江戸から庄内へ引き上げることになり、その当初の住まいの場としてこの湯田川温泉が選ばれたんだそうです。その本部として使われたこちらのお宿の館内には、新徴組に関する各種資料が展示されていました。


●お部屋
 
客室全8室という小規模なお宿ですが、むしろそのこぢんまりとした規模感を活かし、お宿の方は家庭的に接してくださいました。今回私が通されたのは、玄関を上がってすぐ右にある8畳の和室です。一人で泊まるにはもったいないほど広くて快適なこの室内には、エアコンの他、コタツやファンヒーターなどが用意され、夜間の冷え込みに万全な対策がとられていました。また大きなテレビが設置されているほか、室内に洗面台も設けられているため、お風呂とトイレ以外は室外へ出る必要もなく、のんびりと寛ぐことができました。



この時は某大手宿泊予約サイト経由で夕食なし・朝食ありのプランを予約しました。従いまして夕食の際には別の場所に出かけたのですが(具体的には鶴岡市街へ出ました)、朝食はお宿でいただき、指定の時間になると別室へ案内されました。鮭・ひじき煮・おひたし・温泉卵など、日本旅館の朝ごはんらしい胃にやさしい献立でした。


●お風呂
 
さてお風呂へまいりましょう。浴室は玄関の左側。出入口のドア脇には庄内地方の入浴施設でよく見かけるポスターが貼られていました。滝に打たれているお爺さんの右に「身を清めるにもルールあり」というコピーが、左下には「滝行は温度を問わず、入浴は41度」という一文が記されています。これは山形県庄内保健所が作成したもので、熱いお風呂に入って倒れちゃうお年寄りが多いことから、その啓蒙活動として庄内エリアの各入浴施設に掲示されています。滝行を全面に出してくるデザインは、いかにも羽黒三山の地元らしいところ。


 
脱衣室はコンパクトながらも綺麗に維持されており、洗面台にはアメニティ類も用意されていました。とはいえ、そのラインナップは高齢者向きかも。なお衣類や荷物を収める棚は男女で互い違いになっており、これによって限られたスペースの有効活用が図られていました。


 
お風呂は男女別の内湯のみで、旅館と称している割には比較的コンパクトですが、天井が高いため湯気の籠りが少ない上、お手入れが行き届いて綺麗に維持されているので、快適に利用することができました。


 
洗い場にはシャワー付きカランが2基設置されているほか、鏡だけあってカランの無い区画もひとつありました。いずれもスペースに余裕がなく浴槽と接近しているため、私が洗い場を使用した時には、シャワーの飛沫やシャンプーの泡が湯船に入らないよう心がけました。なおカランから出てくるお湯は真湯です。



浴槽は約1.5メートル四方で3~4人サイズ。やや深い造りなので入り応えがあります。縁は一般的な御影石ですが、底面は水色とグレーの豆タイルを用いて花のようなパターンがあしらわれています。タイルの色合いがお湯の透明度をより一層際立たせています。完全掛け流しで湯加減は41℃前後。ポスターのお爺さんもこの湯加減なら文句は言わないでしょう。


 
温泉は白い析出がビッシリとこびりついた湯口より大量に吐出されており、浴槽の縁から惜しげもなく溢れ出ています。私が湯船に入ると一気にオーバーフローし、浴室内は軽い洪水状態となってしまいました。浴槽の容量に対して投入量が多いため、お湯は常にフレッシュであり、浮遊物なども見られず大変クリアです。言わずもがな、湯使いは完全放流式です。
こちらの使用源泉は他のお宿と同じく1号泉なのですが、投入量が多いために温泉が持つ個性がよく現れていました。具体的には匂い・味ともに石膏感がしっかり主張しており、硫酸塩泉らしい引っかかる浴感が得られるのですが、同時に軽やかで優しく、湯船に体を沈めるとまるで羽毛が全身をふんわり包んでくれるような感覚に抱かれるのです。しかも41℃前後という微睡を誘う湯加減ですので、湯船に入ると思わず長湯してしまうこと必至。また、お湯が持つ力も強いため、決して熱くないのに、湯上がりは体の芯までいつまでもホコホコし続けます。それどころか、長湯仕様の湯加減なのに、湯中で体がしっかり温まるので、長湯したくでも体が逆上せて音を上げてしまうでしょう。一見大人しそうに見えながら、実は秘めたるパワーを持っているという、まさに本物の温泉ならではの体験を味わうことができるでしょう。

フレッシュな掛け流しのお湯に浸かって湯田川温泉の実力を体感できる、家庭的でリーズナブルなお宿でした。


湯田川1号泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 42.2℃ pH8.7 溶存物質1169mg/kg
Na+:207.8mg, Ca++:148.0mg,
Cl-:544.4nmg, SO4--:694.8mg, HCO3-:13.1mg,
H2SiO3:40.5mg,
(平成26年7月31日)
消毒あり(衛生管理のため深夜帯の4時間消毒)

鶴岡駅より庄内交通バスの湯田川温泉・坂の下・越沢行で「湯田川温泉」バス停下車すぐ
山形県鶴岡市湯田川乙56  地図
0235-35-3355
ホームページ

日帰り入浴10:00~16:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★


コメント (2)
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