経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

‟新しい資本主義”の末路 (下)

2022-12-08 07:28:27 | 予算
◇ 「所得倍増計画」はどこへ行った? = 岸田首相は総理大臣に就任する前、しばしば「所得倍増計画」の推進を主張していた。当時、人々は「これで世の中が変わり、収入が増えるかもしれない」と期待したものである。というのも、日本の賃金は30年間にわたってほとんど上がらない状態が続いていたからだ。しかし首相になってからは、この言葉を口にしなくなった。魅力的だった「所得倍増計画」は、どこへ消えてしまったのだろう。

「所得倍増計画」は、もともと1960年に当時の池田首相が実行に移した経済政策。1960年代の10年間に、日本の実質GNPを2倍にすることを目標にした。だが実際は約7年間で、この目標を達成してしまう。その池田首相が創設した自民党の派閥が宏池会。岸田首相は60年後のいま、その宏池会を率いている人。それだけに「所得倍増計画」の再現は、説得力もあったと言えるだろう。

60年前の「所得倍増計画」は、なぜ大成功したのだろう。戦後の復興需要は強かったが、財政的な基盤はきわめて弱い。そうしたなかで池田内閣は、限られた財政資金をまず鉄道や道路のインフラ整備に注入。次いで産業を繊維→軽工業品→鉄鋼→電機→自動車へと、しだいに付加価値の大きい業種に誘導。その輸出代金によって、日本の高度成長を実現したのである。

そこには常に「日本経済の次の段階」を見る目があった。いまの政治には、それがない。その結果、日本は半導体・太陽光パネル・蓄電池・EV・水素燃料など、多くの先端分野で世界一の座を失った。賃金は上がらず、人々は将来への希望を見失っている。その閉塞感を打破して、世の中を変える。それが「新しい資本主義」だったのではないか。140兆円もの財政資金を使いながら、それが出来ないのはなぜか。それを真剣に考えないと、岸田内閣は間もなく行き詰まる。

         ≪7日の日経平均 = 下げ -199.47円≫

         ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫


コメントを投稿