経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

異常に明るい見通し : 企業景況調査

2018-06-15 08:50:16 | 景気
◇ 現状は1年ぶりのマイナス判断 = 財務省と内閣府は12日、共同で実施した4-6月期の法人企業景気予測調査を発表した。それによると、大企業・全産業の景況判断指数はマイナス2.0。4四半期ぶりのマイナスに落ち込んでいる。このうち製造業はマイナス3.2、非製造業はマイナス1.4だった。中堅企業・全産業もマイナス1.0、中小企業もマイナス10.6と、すべてが水面下に沈んでいる。

ところが業況の先行き見通しについては、驚くほど楽観的な結果が出た。大企業・全産業の見通しは7-9月期が6.9、10-12月期が7.9と急速に改善する。中小企業でさえ、10-12月期にはプラス0.8まで浮上する見通しだ。その結果、設備投資計画も年内は尻上がりに拡大する予想となっている。

この調査は5月15日時点で、全国1万3000社を対象に行われた。判断指数は「前期より上昇した」という回答の割合から「下降した」と回答した割合を差し引いた数値。その企業の業況判断のほか、いくつかの項目についても同様の方式で質問、指数を算出している。たとえば国内の景気についても聞いているが、その見通しは現在のプラス7.2から7-9月期は6.9、10-12月期は5.8へと緩やかに下降する。

この調査の致命的な欠陥は、景況感が変化した理由を聞いていないことだ。なぜ4-6月期が1年ぶりのマイナスに低下したのか。なぜ国内景気の見通しが鈍化するのに、企業の景況感が急上昇するのか。最も知りたい点が、全くつかめない。ヒトとカネを使って大掛かりな調査をするのだから、内容も改善してほしいものだ。そうでないと、結果もにわかには信じがたい。

       ≪14日の日経平均 = 下げ -227.77円≫

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ


用意周到の 民意形成を : 対北朝鮮

2018-06-14 07:58:23 | 北朝鮮
◇ どの段階で対応するのか = 米朝首脳によるシンガポール会談は、拭い切れない疑念を残して終了した。共同声明には「朝鮮半島の完全非核化」と「北朝鮮の体制保証」が明記されたものの、非核化の時期や具体策については全く触れられていない。このため北朝鮮はまたまた時間稼ぎをするのではないか、という疑念が残ってしまう。しかし金正恩委員長もそんなに甘くはみていないだろう。北は段階的に非核化を進める可能性の方がずっと高い。

その場合、日本はどの段階で、どのように対応すべきなのか。たとえば核実験場が完全に破壊された時点、ICBM(大陸間弾道弾)が廃棄された時点、中短距離ミサイルも破棄された時点。また拉致問題でも、北朝鮮が再調査に応じた時点、実際に拉致被害者が帰国した時点など。節目となる段階は、いろいろ考えられる。

日本側の対応策も、いろいろある。まず経済制裁の解除。総体的には国連の動きに準ずればいいが、独自の制裁も段階を追って解除することになるだろう。また戦時補償の問題と新たな経済援助も、日本は負担しなければならない。これらの対応策をいつ、どんな段階で、どの程度を実施するのか。

安倍首相は拉致問題の解決が、大前提だと言っている。しかしトランプ大統領は、非核化・非ミサイル化の節目ごとに、日本に対して行動を要請してくる可能性が強い。その可能性までを考慮に入れながら、いまから政府の方針を明示し、世論の形成に努める必要がある。そうしておかないと、こんどは日本がオタオタする番に回ってしまうだろう。

       ≪13日の日経平均 = 上げ +88.03円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 =下げ ≫


トランプ大統領の 頭のなか (下)

2018-06-13 07:36:55 | トランプ
◇ 1-3月期の対日赤字は151億ドル = G7首脳会議は滅茶苦茶な結果に終わったが、トランプ大統領はここでも得点を挙げた。というのも、EUとの間で貿易問題を協議する新たなワク組みを創る合意を取り付けたからである。すでに日本とは、7月から貿易協議を始めることが決まっている。トランプ大統領も6対1では大変だが、個別の交渉に持ち込めばアメリカの力を十分に発揮できると踏んでいるわけだ。

トランプ大統領の頭のなかには、こんな数字がぎっしり詰まっているに違いない。米商務省の集計によると、ことし1-3月期の貿易収支は合計で1556億ドル(約17兆円)の赤字。その内訳は対中国が934億ドル、対EUが304億ドル、対日本が151億ドルの赤字といった具合。これらの赤字を、2国間の個別交渉で減らそうとしているわけだ。

モノの輸入を減らせば、国内の生産は増える。このことは理論的に正しい。しかし相手国が報復措置としてアメリカ製品の輸入を制限すると、その分アメリカ国内の生産は落ちる。だがトランプ大統領は、鉄鋼や自動車の生産が伸びて選挙の票につながれば、それでいい。たとえば報復関税で電子機器の輸出が伸び悩んでも、それは民主党の地盤だから構わないと考えているように見受けられる。

中間選挙に勝って、自身も2年後の選挙で再選される。歴代の大統領が出来なかったことを成し遂げ、歴史に名を残す。トランプ氏の頭は、その将来像でいっぱいだ。だからシンガポールでの米朝首脳会談も成功させなければならなかった。その勢いをかって、7月からの日米貿易交渉にも臨んでくる。日本側は、どう対抗するのか。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +74.31円≫

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ


トランプ大統領の 頭のなか (上)

2018-06-12 07:47:41 | トランプ
◇ G7サミットをぶち壊す = カナダのケベックシティで8-9日に開催されたG7サミット(主要7か国首脳会議)は、前代未聞の結果に終わった。各国首脳がアメリカの鉄鋼・アルミに対する輸入制限をきびしく非難したが、トランプ大統領はどこ吹く風。貿易の大赤字を減らすための正当な措置だと強弁して、取り合わなかった。しかもトランプ大統領は会議に遅刻したうえ、終了を待たずにシンガポールへと飛び立ってしまった。

それでも、残された6か国首脳はなんとか共同宣言をまとめて発表した。貿易に関しては「保護主義と引き続き戦う」と明記。さらにトランプ大統領の顔を立てて「WTO(世界貿易機構)の改善を進め、関税・非関税障壁の削減に努める」という文言も付け加えた。ところが専用機のなかでこれを知ったトランプ氏は「首脳宣言は承認しない」と声明した。全くのぶち壊しである。

トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”主義は、よく知られている。この主義を貫くためには「出来上がった現在の秩序やワク組みを壊す必要があると、トランプ氏は確信しているように見受けられる。たとえば移民の受け入れを拒否し、国民皆保険を目指したオバマ・ケアをご破算に。また大気汚染防止のパリ条約からも脱退した。その裏には、11月の中間選挙を見据えた票集め作戦が常に見え隠れする。

国際貿易の面でも同様だ。自由貿易を標榜するWTOは、アメリカにとって不利である。だからアメリカの貿易収支は、長いこと大赤字を続けている。この赤字を削減すれば、アメリカ国内での生産が増えて、雇用者も増加する。こうした一般論を前提として、具体的には鉄鋼やアルミの輸入に高関税をかける。すると工場が集中している北東部で、共和党の票が増える。同様の手法で、次は自動車を標的にする。これがトランプ氏の頭の構造だ。

                              (続きは明日)

       ≪11日の日経平均 = 上げ +109.54円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ

今週のポイント

2018-06-11 07:43:29 | 株価
◇ 米朝首脳会談で大幅高 = 市場の耳目が、一斉にシンガポールに集中した。その成果に期待して、ニューヨーク市場のVIX(恐怖指数)が11台まで急降下。ダウ平均は先週681ドルの大幅高となった。カナダで開かれたG7(主要7か国)首脳会議や、そこでの主要議題となったアメリカ主導の関税引き上げ競争。あるいは今週に迫ったFRBによる政策金利の引き上げや、イタリア・スペインの政情不安など。大きな材料もあったが、シンガポールの陰に隠れてみな重視されなかった。

日経平均は先週523円の値上がり。ニューヨークの活況に引きずられた感じが強い。円相場がほとんど動かなかったことも、市場の空気を明るくした。ただ3月期の決算発表が終わり、19年3月期の業績は多少の減益になる見込みが強まっている。ニューヨークの動向にもよるが、何か新しい材料が出ないと今後の足取りは重くなりそうだ。

一度は中止と発表し、すぐに開催すると方針転換。米朝首脳会談に対するトランプ流の戦術に、市場は乗せられたのか。それとも意識的に乗ったのか。いずれにしても12日の会談で、驚くような結果は出ないだろう。そのあと市場の空気が、どう変化するか。シンガポールから目が離れると、恐怖指数は上がりやすくなる。

今週は11日に、4月の機械受注。12日に、4-6月期の法人企業景気予測調査、5月の企業物価、4月の第3次産業活動指数。アメリカでは12日に、5月の消費者物価。13日に、5月の生産者物価。14日に、5月の小売り売上高。15日に、5月の工業生産、6月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が14日に、5月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお12日には米朝首脳会談、13日にはFRBが利上げを発表する予定。

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ


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