経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

米中貿易戦争の 行くえ (下)

2018-06-20 08:11:57 | 貿易
◇ 出る杭を打った? トランプ大統領 = 今回の関税引き上げ競争で米中両国が受ける損失は、そんなに大きくないという見方が多い。たとえば大和総研は「中国のGDPは0.3%、アメリカは0.19%減少する程度」という試算を発表した。しかし全体はそうでも、部門によっては打撃が大きい。たとえば中国は鉄鋼や電子産業、アメリカは農業だろう。それに物価の上昇も招くから、消費者の負担は増大する。

アメリカはすでに鉄鋼とアルミニウムに、高い関税をかけた。これに対して、EUやカナダ、メキシコ、インドなどが報復関税をかける方針。こうして世界的な広がりを見せ始めた貿易戦争が長引けば長引くほど、その悪影響は累積的に拡大して行くだろう。また貿易戦争は長引くという予想が強まれば、株価は下落する。さらにリスク警戒感が高まり、新興国からの資金流出が加速するかもしれない。

トランプ政権は中国に対して、さらに1000億ドル分の関税上乗せ、アメリカへの投資規制をも検討中と伝えられる。こうしたトランプ大統領の強引な仕掛けは、すべて11月の中間選挙を意識したものだという見方が強い。たしかに鉄鋼やアルミ、あるいはハイテク産業を保護し、その地域の票集めを狙っているのだろう。だが中国の報復措置で打撃を被る農業も、共和党の牙城である。

周知のように、アメリカはいま世界一の経済大国。それを追っているのが、GDP第2位の中国だ。その中国の成長率はアメリカの2倍以上、この調子だと10年後には関係が逆転する。アメリカ・ファーストを標榜するトランプ大統領にとって、これは我慢できない。いまのうちに、出る杭は打つ。基幹産業の鉄とIT電子産業を叩く。もしトランプ大統領の真意がここにあるとすれば、貿易戦争は長期化せざるをえないだろう。

      ≪19日の日経平均 = 下げ -401.85円≫

      ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ


米中貿易戦争の 行くえ (上)

2018-06-19 07:38:03 | 貿易
◇ 二段構えの真意は何か = トランプ大統領は15日、とうとう中国に対する制裁関税の発動を公表した。中国製品500億ドル(約5兆5000億円)分について、輸入関税を25%上乗せする。ただ実施は2段階に分け、最初は7月6日に発効する340億ドル分。残りの発効日は決めていない。対象となる品目は1102品目に及び、産業用ロボット、電子部品など。国民生活に直接関連する携帯電話やテレビなどは除外した。

中国政府は、すぐさま反応した。アメリカ産の大豆やトウモロコシ、牛肉、航空機、自動車など500億ドル分に25%の関税を上乗せ。そのうち第1段階として、7月6日から340億ドル分について実施する。このように中国側の対応措置は、金額や時期をアメリカの決定と全く一致させた。少なくとも、相手側の制裁を上回るような報復は避けたことになる。

アメリカはなぜ実施を2段階に分けたのだろう。国内業界との調整に手間取っているという情報もあるが、それよりは第1段階を実施したあと、ひと息入れて再交渉に臨む時間を作ったような気がする。米中両国は5月以降3回にわたって、閣僚級の貿易協議を開いている。だが、そこでの合意に失敗し、今回の関税引き上げ競争に至ってしまった。

中国は知的財産権を侵害している。これがアメリカ側が制裁に及んだ理由だ。具体的には技術移転の強要などだが、国有企業に対する補助金の支給についても議論は割れたまま。アメリカは鉄鋼などが不当に安い値段で輸出されていると非難するが、中国側は国営企業を育成する重要な政策手段だと考えている。この問題で歩み寄りが出来ないと、仮に協議が再開されても戦争終結は難しいかもしれない。

                                 (続きは明日)

       ≪18日の日経平均 = 下げ -171.42円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ


今週のポイント

2018-06-18 08:15:50 | 株価
◇ ダウは下げ、日経平均は上げ = 史上初の米朝首脳会談、FRBによる追加利上げ、アメリカの中国に対する制裁関税の発動ーー大きなイベントが続いたが、株価はそう大きくは振動しなかった。ただ鮮明に分かれたのは、ニューヨークが下げ、東京は上げたこと。先週、ダウ平均は226ドルの値下がり。日経平均は157円の上昇だった。

米朝会談は成功したのかどうか、現状での判断は難しい。市場も消化不良のようだった。アメリカの利上げも年内あと2回の追加は厳しいが、それだけ国内経済が好調なことを物語っており、売り材料にも買い材料にもなる。ただ米中間の貿易戦争だけは、明らかに悪材料。そのためダウ平均は前に進めなかった。

日経平均が続伸したのは、円相場が下落気味に推移したため。アメリカの金利上昇で日米間の金利差が拡大するとの思惑で、円が売られた。しかし米中間の貿易戦争が激化すれば、日本も悪影響を免れない。円安はまだ持続するかもしれないが、日本株だけが独歩高という状況ではないだろう。

今週は18日に、5月の貿易統計。20日に、5月の訪日外国人客数。22日に、5月の消費者物価と4月の全産業活動指数。アメリカでは19日に、5月の住宅着工戸数。20日に、5月の中古住宅販売。21日に、5月のカンファレンス・ボード景気先行指数が発表される。

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-06-17 08:01:57 | SF
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪37≫ シュべール博士 = この星では大勢の人と出会ったが、シュベール博士ほど変わった人はいない。胸のプレートは≪20≫だ。長身でやせ形、長く伸びた白髪の間からギロリと目が睨む。まるで仙人のようだ。ニコリともせず、こう言った。「君がうわさの地球人かね。われわれと、そんなに変わらないんだな」

マーヤが賢人会のウラノス議長に連絡すると、折り返し手紙が届いた。すべて無線で用が足りるこの国では、とても珍しいことだという。開けてみると「シュベール博士と会いなさい」と書いてある。この島の南端に突き出た半島にある、エネルギー研究所の所長だそうだ。紹介状も同封されていた。

紹介状を一瞥すると、そのシュベール博士はへの字に曲げた口を開き、低い声で語り始めた。
「新金属ダーストニウムのことを教えてやってほしい、と書いてある。ウラノスさんが言うんだから仕方ないが、本当は教えたくないんだ。なにしろ最高の国家機密だからね。まあ、いい。何が知りたいんだ」

――少量のダーストニウムを混ぜると、鉄や金やニッケルなどの金属が簡単に融合する。そうして出来た合金は、強度が格段に増したり、強い磁性を帯びると聞きました。その新しい合金は何に使うのでしょう。
「うむ。使い道は秘密でも何でもない。君はここへ来るのに、高速道路に乗ってきただろう。その路面には、ダーストニウム合金で作った細い線を内蔵した強化ガラス板が敷き詰められているんじゃ。何のためだか、判るかね」

――もしかして、太陽光を集めて発電しているんじゃないですか。
「おう、なかなか勘がいいね。その通りだ。高速道路は延べ5万キロにも達するから、これだけで必要な電力は十分に賄える。雨はできるだけ夜のうちに降らせるようにしているから、昼間はたいてい発電できるんじゃ。次の質問は?」

――ほかにも何か利用しているんですか?
「ああ、沢山あるよ。その高速道路の中心部には、鉄に新合金を混ぜたレールが敷いてある。その磁力で車をほぼ浮かしているから、車は小さなモーターでも高速で走れる。鉄道の時代に完成していたリニアの技術を使っているんだ。この磁力の力で、車は絶対に軌道から外れない。前後左右の車と衝突することもない」

金属精錬所のロボット所長が「ダーストニウムの発明で、エネルギー供給と交通手段が革命的に変わった」と言ったのは、こういうことだったんだ。

――でも、なぜそれが国家機密なんですか?

こう尋ねると、シュベール博士は背筋を伸ばして、ぼくを睨みつけた。

                            (続きは来週日曜日)

無法状態に陥った 就活戦線

2018-06-16 08:05:30 | 就職
◇ 3年生になったら活動開始 = 来春卒業予定の大学4年生は、もう3分の2が企業の内定を獲得した。就職情報大手ディスコ社の調査によると、6月1日時点の就職内定率はなんと65.7%に達している。経団連の指針では、6月1日が採用活動の解禁日。その日にはもう3分の2が内定しているというのだから、開いた口が塞がらない。しかも3年生になったばかりの大学生も就活を始めているというから、2度びっくり。いったい、どうなっているんだ。

就活の状況が異常になった背景には、人手不足という事実がある。しかし就活を巡る制度自体にも、問題があるようだ。内定の返上が増えているため、企業側は必要以上に内定を乱発。最近の傾向は、内定を獲得した学生1人平均で2.5社から内定を受けているという。すると、どうしても返上率が増えざるをえない。それがまた内定の乱発に繋がるという悪循環を生んでいる。一方、経団連の指針を守っている企業には、学生が集まらない。だから指針を守らない企業が増える。

この4月に3年生になったばかりの学生にも、企業側の囲い込みが始まった。その手段に使われるのがインターンシップ。本来は学生に就業体験をしてもらうのが目的だったが、これが面接代わり。経団連が昨年、インターンを1日だけでも実施できるように改めたため、ことしは実施する企業が大幅に増えている。

大学3年生と言えば、勉学に最も身を入れる期間。それが就活に明け暮れるようでは、学生の質は落ちてしまう。長い目で見れば、日本の将来も危うくなる。経団連には、この状態を改善する力はないだろう。文部科学省は有識者会議を招集して、早急に対策を講ずるべきだ。そうでないと、就活戦線は大学1-2年生にまで拡大する恐れがある。

       ≪15日の日経平均 = 上げ +113.14円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】  


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