魅惑のワインと出会う100の方法

デイリーからカルトワインまで、日々探し求めては飲んだくれているワイン屋のおはなし。

気の良いおじちゃんだった。

2011年09月02日 | ワイン ~2020年
うちの斜め前に住んでいる気の良いおじちゃんだった。

たま~にうちにお酒を買いにきてくれた。

「もうそろそろダメばい」って以前言ったような気がする。気がする。


「そがんことはなかでしょう。無理せず元気に飲んでくださいよ。」そう返した
気がする。気がする・・・。




今朝訃報を耳にした。


5月くらいから末期ガンだったようだ。

原爆の語り部としてひとり芝居をしていた。


題目は「命ありて」


自らは何とか助かったものの、被爆して次々と知り合いを亡くしていく悲劇。
かつて久米宏のニュースステーションにも出演され、かなりその道で知名度
があった方だし、いろんな取材も多かったようだ。

身を削って懸命に平和を訴えた方だった。


記事によれば5月から入院しているにもかかわらず、8月5日に外出しながら
芝居公演をやってのけた。それが最後の公演となったようだ。

見たかった。一度でいいから見たかった。
そのうち・・・と思ってしまったのがいけないんだなあ。

だってあの元気なおじちゃんが、こんなに早く逝ってしまうとは思わなかったから。







今夜のワインはこんな白。


2009 ロンボ ビアンコ
   (伊、トレビアーノ種、マルバジーア種、白、650円)


安もの。だけどしっかりミネラル感が感じられる不思議なコストパフォーマンス。
予想外の厚みもあり、この価格では驚くほどの完成度。


そのミネラル感は鋼鉄を思わせ、原子爆弾の外装、落とした爆撃機の外装、そして
心の冷たさとしての冷徹な温度、何となく結びついて連想してしまう。

「ミネラルっぽさ」をワインの褒め言葉として使ってきたが、今晩だけは冷たく
感じてしまう。悲しみがミネラルの中に溶けるようだ。


亡くなったWさんの公演を平和学習として学んだ多くの方達、ちゃんと戦争の
もたらす悲劇を理解しているはずでしょう。

安易な気持ちで(特にネットの掲示板ではそれがひどいようだけど)すぐに反日国
に「戦争だ!」なんて言わないで欲しい。踏みつけられる人々の、消えていく人々
の心を“死人に口なし”として軽々しく考えないで欲しい。


戦争の悲劇を、裏側を、いろんなことを知れば知るほど、聞かされれば聞かされ
るほど、「じゃ、なんでそんな戦争したの?」と思う。
「どうしたら多くの人がもっと平和に、そして“全員が豊か”とは言わないまでも、
最低限の楽しく喜びのある暮らしができるのだろう?」と思う。

もちろん答えなんて、あまりに難しすぎて分からないけどさ。

おじちゃんの訃報からついいろいろと考えてしまう、そんな夜なんだよ。

コメント (2)
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