どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

耳の穴のカナブン(5)

2006-11-22 22:51:24 | 連載小説
 住み込みの女中が、急な用事でも思い出してトシオを呼んだのだろうか。  モトコは、半信半疑の迷いのなかで、女中部屋まで確かめに行こうかと身を起こした。 「いま誰か、ぼくのこと呼んだ?」  トシオが目をこすりながら、モトコに訊いた。 「坊ちゃまにも、聞こえたのですか」  モトコは、やはり自分だけの空耳ではなかったと安心する一方、不審の思いがつのって確かめずには置けない気持ちになっていた。 「坊ちゃま . . . 本文を読む
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