けやき落ち葉
(季節の花300)より
ケヤキの大木から振り落とされた枯葉が
冷え切った土の上で縮こまっている
季節ごとの定めとわかっていても
先輩の姿のようで痛々しい
誰に対しても無邪気だった
困るほど人懐っこい人だった
だが おおらかさに程度があるように
ときどき寂しげに見えました
泣けよ 泣いて叫べよ
吹きさらわれる落ち葉となって
海峡を越えていけよ
故里のみかん畑にこっそり着地するがいい
どれほどの間違いを犯したのか
どれほどの不始末を仕出かしたのか
贖罪のほどは僕らにはわからない
おおらかな笑いに安堵するだけだった
落ち葉ころころ冬の街
家族おろおろ幼子も
おびえさまよう風の道
泣きたい思いは僕らにも
先輩どこにいるのですか
想い出話に登場する戸隠ですか
一宮にある文豪ゆかりの宿ですか
それとも泣く泣く別れた妻の懐ですか
落ち葉の季節は悩ましいのです
京橋のビヤホールもなぜか辛いし
草津白根はもう近づくこともできません
柏のカラオケスナックは道さえ忘れました
落ち葉ころころ転げてどこへ
妻子の暮らしも見届けずに
別れを超える悲しみはないでしょう
落ち葉のゆくえに僕らも惑うのです
いつも飄々と風のような彼を中心に何の目的もなく5人であちこち小さな旅をしたっけなー
あれは人生の中でもほかに代えがたい至福の時間でしたね。
彼がいなくなってから、ああいう時間は、もうほとんど持てなくなりましたが、窪庭さんのこの詩があの時空へタイムスリップさせてくれました。
彼・・・宇宙のどこかであの風を吹かせているのかなあー
いい歳をしたオヤジ5人が、あっちだこっちだと長年にわたって泊まりがけの小旅行が出来たのは、仰るとおり何ものにも代え難い至福の時間としか言いようがありません。
その中心にいた先達、彼の存在は多面体の水晶のように思い出の中で煌めいています。
ぼくは何度もそのキラメキに心を馳せ、彼の存在の証を文字のなかに止めようとしてきました。
しかし、未だ思うように表現できておりません。
きっと、宇宙のどこかで「下手くそ」と笑っているのではないでしょうか。