夏も終わり秋の気配が色濃くなるころ、シシトウがやっと赤くなり始めた。
1本の苗木につぎつぎと白い花をつけ、それが青い実となって食卓に変化をつけてくれる。
たまたま視界に入りづらい地面すれすれの実が、取り忘れたまま赤く色づいていた。
魂胆があってそのまま放っておくと、赤さを増し、図体もどんどん大きくなった。
「よし、これは来年用のタネになるかもしれない」
多くの野菜は種苗会社の都合で、1代限りの<一代配種>というハイブリット種が使われており、翌年用のタネにはならないのである。
こんなことを書くと、「育てやすく、均一な成果を得るための交配で、むしろ恩恵を受け取ってもらいたい」と種苗会社から苦情が出そうである。
しかし、「タネを制する者は世界を制する」というのが今や常識となっていて、農業従事者はいやでも種を買わなくてはならないようだ。
昔は、トウモロコシでも麦でも今年収穫したものを選別して、翌年のタネとして保存しておいたものだが、一度でも途切れたら万事休す。
ハイブリット種を購入する羽目になる。
こうした状況を意識しながら、「シシトウ」に期待するのは無謀かもしれない。
しかし、季節を感じて、こんなに赤くなるのだから、「きっと子孫を残すはずだ」と思いたいのだ。
人間の手であれこれ操作されても、植物本来の子孫を残す力が蘇るかもしれない。
それに、このシシトウは海老のように尻尾を曲げて、釣りで言えば鯛をも釣れそうじゃないか。
収穫して乾燥させて、来年試してみる価値はある。
植物の実は、熟れれば色づき、人間に喜びを与えてくれる。
危うい願いだが、当面信じてみることにする。
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(不手際により、画像・文章が未完のまま公開してしまいました。途中でお読みいただきました方にお詫び申し上げます)
赤くなるまで残してもらった種よ
根性出して、意地でも来年芽を出してくれ
遺伝子のどこかにまだ、子孫を残す秘密を隠していると信じたい
昨年は、市場で買ったカボチャ(一昨年)の種を播いてみたところ、小さな実が2,3個付いたものの結局うまくいきませんでした。
こちらの未熟さもあるので結論付けられませんでしたが、今思うとカボチャも犠牲者だった気がします。
世界一位の種苗会社モンサント〈米国〉は、すでにバイオ企業として遺伝子組み換えの先頭を走っていますが、日本のタネ会社も同じでしょう。
大義名分の陰で、植物は泣いていることでしょう。