いやはや、朝っぱらからごめんなさいよ。
10月に入って急に涼しくなったものだから、恥ずかしいくらい食欲が出てしまってね。
こんな小さな里芋の葉っぱまで、モリモリと食べつくすほどの大食漢なんだ。
そういうお前さんは誰だっていうんですかい?
名乗らないといけませんか。
名を名乗るほどの者ではないのですが、それほどおっしゃるなら後ほど申し上げます。
ぼくの仲間や後輩は、いまサナギになる準備を始めているところなんだ。
あまり徒党を組むタイプではないけど、なんとなく傍若無人に見えるかもしれないな。
鬱陶しいでしょうが、しばらく目をつぶっててくださいね。
ぼくらの姿を見て、うわーッとか言う人もいるでしょうが、この季節あっちでもこっちでもこういう風景が展開しているのです。
大急ぎで変身しておかないと、厳しい冬をやり過ごせないからね。
* *
さて、約束した通りそろそろ名を名乗りますね。
ぼくのように黒地に黄色の横縞シャツを着たやつは、セスジスズメという蛾の仲間に分類されているようですよ。
家庭菜園なんかでぼくらに出遭うとビックリするでしょうが、どのサイトや図鑑にもセスジスズメとして載っているので身分詐称はできません。
つまり、ぼくは蝶ですとウソをつくことはできないのです。
蝶々かなと期待した方には申し訳ないのですが、あまり見栄えのしない茶色の蛾になる運命なのです。
里芋の葉を食べていたぼくら芋虫は、本来7月から9月頃に姿を現すのですが、なんたって異常気象の今日ですから10月だからって不思議はありません。
ご覧の通り、大きくなると8cmくらいまでのサイズになります。
ですから、食欲旺盛で1匹でも葉を食べつくすほどです。
見た目は怖そうですが、毒はありませんので手で触っても大丈夫ですよ。
まあ、雨が降りそうなので葉っぱの上に長居をするつもりはありません。
早く地中に潜ってサナギになり、木の葉や草の陰で雨風をしのぐつもりなんだ。
では、来年までバイバイ。
ロケット型の胴体に茶色っぽい翅をもった蛾を見かけたら、ぼくらが無事に成虫になったんだと思ってください。
(おわり)
あおい芋虫が夏の間には多くみられますがこの芋虫がどう冬を越すのかは、あまり深くは考えたことがありませんでした。
蛾なる生態も知りませんでした。小動物の生態、カブト虫の幼虫が秋深くになると残っている木っ端堆肥の中で育っているのに秋の堆肥にしてしまいます。
無慈悲と思われますが困ってしまいます。
わたしの住まいは丘陵・山の中腹ですので被害はなかったのですが、畑の直売小屋が古くなった鎖の支えを切って倒れておりました。とにかく雨が多いので根腐れが生じております。
雨風の機嫌でどこがやられるか、不安な時代になりました。
子供のころ、堆肥をひっくり返していると、真っ白なカブトムシの幼虫が出てきてびっくりしたことがありました。
もともと枯れ葉は虫の住処というところでしょうか。