霧の軽井沢で出会ったのは
異星からの訪問者だった
碓氷バイパスを登りきったところで
黄色に潤むいくつものUFOがぼくを待っていた
ようこそ わが町へ
夢見心地のぼくを迎えて
いくつもの小さな宇宙船が
いっせいに光の通信を交わし始めた
軽井沢は古風なリゾート地だったが
いつから異星人の町になったのだろう
気づかずに避暑生活を楽しむのもいいが
霧に紛れて侵略は始まっているのだ
音楽の森と思索の湖が広がる初夏
異星人は町から離れた峠の上で集合する
それとも早朝だけの占拠なのか
霧が晴れれば旧軽通りは変わらず賑わうだろうか
万平ホテルにもブレストンコートにも
樹間を通り抜けた風が異変を伝えないのか
賛美歌もパイプオルガンも
いつまで十九世紀の旋律を奏でているのだ
小鳥とともに季節に酔い
真っ白なシーツの上で微睡んでいると
荒船山を目印に空からの侵入者が飛来する
とりわけ異星人の好きな霧の朝など・・・・
ようこそ 軽井沢へ
地上の戦火は未だ絶えていないが
この町は侵略とは無縁と知ってくれ
明け方の眠りは価千金 森の声は天の賜物
霧の中でためらうUFOよ
橙色に融和しようじゃないか
友好の挨拶を音階に乗せ
ピピポパピーと会話の真似事をしよう
のろのろと明ける帳は退却の合図
乳色の粒子が異星人を包むと
後退する光のベクトルが
夢の残骸を道端に曝すのだ
シーアゲイン UFO
八風からのコンタクトを忘れないでくれ
霧が取りもつ物語を思い出し
時には見え隠れする点滅で応えてくれ
(『霧の贈りもの』2014/07/23 より再掲)
そう思うと肩の力が抜けてこの地球上も悪くない
今はそこら中コロナだらけなんだろうが、まあ―こんな時期もあるさ・・・とやり過ごせる
でも、まあ、いつの時代にも思いがけないことは起こっていたし、なんとかやり過ごしてきたわけだら、何かの兆しを目を見張って見届けようと思います。