とうもろこし
(季節の花300)より
高原で出会ったハニーバンタムよ
一年間おまえを待っていたのだよ
山小屋でひとり皮を毟っていると
つやつやの粒が顔をのぞかせる
茹でる前に囓ってみると
甘い汁が口の中に広がる
剥かれたまま裏返った皮の先には
焦げ茶色のヒゲが垂れ下がる
なんだよ おまえ
俺の姿にそっくりじゃないか
根元が白くて妙に頼りない
おまえは俺の行く末を暗示しているのか
小便をする器官となりさがってはいるが
むかしは俺も大したものだった
そんな嘆きを繰り返す男のことが
ちょっぴり哀れで可笑しくないか
茹でたての玉蜀黍にパラパラと塩を振る
自前の歯でかぶりつくとさらに感慨ひとしおだ
ああ もろこし甘いかしょっぱいか
終生おれの仲間でいてくれないか
朝夕の冷えた空気に育てられた旨みが
脳細胞にヒシヒシと行き渡る
土用半ばに秋風が吹く・・・・なんて
先人もうまいことを言うものだ
夢中でかぶりつくハニーバンタムも
皮の内側では哀愁を抱えていたのか
俺とおまえは似た者同士
来年も夏の盛りにもう一度逢いたいもんだ
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