青年が山中で予定にないキャンプをした
迫ってくる夕闇に包まれて
パチパチと弾ける焚火を一人みつめる
その瞳に映るのはどんな色の炎だろうか
記録のために焚火の映像を撮る
燃え始めの火から崩れ落ちる火まで
カメラは固定された一点から炎を追い
火は止まることなく揺れ続けた
赤々と燃える焔などと表現するのはいい
見ている限りでは明々とのほうがぴったりだが
くべられた木は熱で内部から気化し
透明なガスを飛ばしてフレアになるのだ
沈黙するキャンパーは何を思うのか
火と向き合い火と探り合う
孤独などとは考えたこともない
人も火もそれぞれに自分の形を持っている
火は木にまつわり付かない
炭化した頑固な木質に見切りをつけ
宙に飛んで幽体に交わる
明々と燃えて染まることのない炎の正体
火を見つめて飽きない青年は
やがて火の哲学者になるだろう
ユジノサハリンスクの森林に入って
前史狩猟民族の痕跡を発見するかもしれない
いち早く山火事を折伏する消防隊員は
枯草に火を放って火事を迎えうち
手品のような消火に成功することがある
火の哲学は知性と勇気に応えるのだ
たった一人のキャンプに幸いあれ
友は山中に宿る汚れなき空気と水
それに湿った土と生まれたての火だ
原始の生き証人はいつの世も人を魅了し続ける
チョロチョロト燃えている火を見つめていると
気持ちが落ち着きますね。
山の中で一人で炎を見つめた事は有りませんが
主人と無人小屋で・・・
友人とテントの外で・・・そんな経験は有ります。
とてもとても文中の主人公の様にカッコ良くは有りませんが
何て言うか炎は安らぎでしょうか。
火はどんな時も、安らぎをもたらしてくれる気がします。
火の態様は千変万化で、なかなか本質に迫ることはできませんが、見つめていると何か答えてくれそうで、心が安らぐのではないでしょうか。
自分一人ではなくとも、山で火を焚いた経験は貴重なものと思います。