どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム78 『悲しみの千日紅』

2021-06-21 00:00:19 | ポエム

母が飛んだ

夕暮れの空へ飛んだ

団地の花壇には苺のような千日紅

ついばむ鳥が嘴から突っ込んだ

 

娘は電気もつけずに泣いた

頼りの父は半年前にツガイの相手を変えた

今どこのねぐらに籠っているのやら

見捨てた団地の窓をテレビは写すだろうか

 

娘は泣き疲れたまま眠り込んだ

目ざめると闇のなかで囁く声がした

おまえは一人ぼっちになった

もう世の中とつながる手立てを失った

 

学校を追われ友だちも遠ざかる

3DKの部屋もやがて明け渡しを迫られる

おまえの約束の地は寒ざむとした施設

それが嫌なら男が提供する一夜の宿めぐり

 

青むらさきの朝が明けていく

娘は体をぶるぶるっと震わせた

一人ぼっちだというのなら独りでいい

世の中とつながれないなら繋がらなくていい

 

娘は代わりに言葉を友だちにした

街をさまよい吐き捨てた恨みが跳ね返るとき

それでも言葉はやさしく音色を奏でる

母が啄んだ千日紅の滴りさえ受けとめて

 

夜よ二度と来るな

強そうに見えても闇の重みは心を押しつぶす

朝も再びめぐってこなくていい

ことばが夢の中で逃げまどうのなら・・・・

 

(2016/11/27より再掲)

 

千日紅画像 に対する画像結果.サイズ: 116 x 95。ソース: blogs.yahoo.co.jp 千日紅

(ウェブ画像)より

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