木槿の花が開くとき
オクテの男が恋をする
晩夏の光が弱まりはじめると
キミにおずおずと話しかけるのだ
ぼくの青春は絵に描いたメニュー
カツレツもハヤシライスもみんな絵空事
だからぼくの恋は
空腹で窪んだ臍の胡麻
木槿を見ると思い出す
なんて優しい色やねん
従順なまま染められる
なんて悲しい色やねん
ぼくの夏は眩しすぎた
落下傘の縫製工場では
学徒動員の女学生が声もなく斃れる
白熱する風景が網膜を焼いたのだ
木槿の花は薄幸の色
機銃掃射の銃弾が屋根を破り
洗いざらしの下着に花を咲かせた
武器と生身のたまゆらの恋
カントクさん
ラバウル航空隊にいる兄も
私たちの作る落下傘を
使っているのでしょうか
木槿の花がつぎつぎに咲き
地上に花弁を貼り付ける
ぬぐってもぬぐっても
容易に消えないたまゆらの恋
キミの兄さんと落下傘のお話は
木槿の花には耳の毒
機体を捨てて脱出するなど
あるはずもないお伽噺
晩夏の日が翳る昼下がり
オクテの男が恋を語る
熱愛でもプラトニックラブでもない物語は
どこか挽歌のようで頼りない
(『木槿の花に恋をして』2013/09/09より再掲)
とっくに卒寿越えの・・・・。
木槿をムクゲと読んでくださる方には、この花の微妙な色合いの妙を思い浮かべていただけると思います。
詩に描いた状況は、若い方にはなかなか想像しづらいことかもしれませんが、戦争のとばっちりを受けた我々としては、生涯忘れられない情景です。
したがって、戦争は嫌いです。
ちなみに、木槿の花は散り落ちるとベタベタと地面に張り付きます。
粘着質なのでしょうか、俗に「みみんだれの木」と呼んでいた記憶があります。
でも、詩というやつは設定など無視して、いかに詩心が伝わるかどうかを重視します。
オクテというのは、そもそもどのような年代にも言える性格的な比喩ですから、卒寿越えかどうかはあまり意味がないのではないでしょうか。
ありがとうございました。
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一時、同人誌などやっていましたので、貴兄のご努力には敬意を表します。
ただ、とうに卒業した身ですので、参加は見送らせていただきます。
ご活躍をお祈り申し上げます。