どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

むかしの詩集とフォト日記(18) 「夏の匂い」

2011-03-02 09:17:21 | ポエム
    ユリ



     「夏の匂い」



  一杯の水が喉の渇きをいやすように

  あなたのまなざしは

  ぼくの心をうるおした



  遠い夏

  あの日の空を想い

  いま千切れ雲に

  通りすぎて行った青春の足跡をみる



  セミの輪唱は祈りのように続いている

  間隙をぬって

  あなたの笑い声が転がってくる

  空へ向かって深々と昏倒したぼくに

  風が軽やかな眠りを運んでくる



  山清水に触れたサワガニのように

  ぼくは青い目覚めをもった

  カマキリのように首をもたげて

  夕闇の匂いを嗅いだ



  去っていく季節の気配に耳を澄まし

  暮れ急ぐ山間の草はらに立ちつくす




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2 コメント

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青春のワンシーン (くりたえいじ)
2011-03-03 16:42:23
「忠男純情詩集」とでも申しましょうか。
青春の夏のワンシーンがギュッと閉じ込められたように儚くも美しい。
言葉が磨き抜かれていることにもよるのでしょう。
たとえば、〈青い目ざめを〉なんて表現が胸に跳ね返ります。

ついでながら、画像の可憐な白百合の周りに生えているのは、紫蘇ではないでしょうか。
摘まんで匂いを嗅ぐと、青い時代が思い出されますよね。
返信する
照れくさいのを承知で・・・・ (窪庭忠男)
2011-03-04 16:12:02
発表した以上、結果を引き受けなければなりませんね。
小説では許されないことばに、いまだ引きずられている大元を、晒しているわけです。
     
なお、百合の周りの植物については、紫蘇だったかどうかはっきり覚えていないんですよ。すみません。
返信する

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