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どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(202) 『ベルツの森に誘われて』

2017-04-29 01:31:47 | ドライブ

 

   

 

 ベルツの森に行ったことがなかったと思ったので、先日身内を送りがてら立ち寄って見た。

 昔からの草津温泉街もいいが、北欧をイメージしたリゾート施設の数々もなかなか魅力的に見えた。

 もともとあった森の中に、オレンジ色の屋根を持つ建物が点在している。

 四季をとおして楽しめる森のゴルフ場、森の迷路、スキー場、テニスコートのほか、ホテル併設の温泉クアハウス「テルメテルメ」など遊ぶ場所には事欠かないようだ。

 

 

   

 

 ホテルのフロント棟の上に残雪の白根山を望む眺望は、ここに宿泊したらさぞ気持ちいいだろうなあと思わせるに十分だ。

 後から聞いたら、寝湯・打たせ湯・サウナ・ミストと温泉も多彩で、幼児用温水プールで子供を遊ばせることもできたとのことだった。

 これからの季節、朝のひととき森林浴プロムナードを散歩するのもおすすめとパンフレットに書いてあるらしい。

 

   

 

 ベルツの森の一角に紛れ込むと、おとぎの国に招待されたような幸せな気分になる。

 ドイツ風の温泉施設に、日本式のきめ細やかなサービスが加味されるわけだから、さぞかし気持ちがいいだろう。

 今度はこっちの番だと、つよく念じたものだった。

 

 途端に、ハタと気づいたことがある。

 そういえば、もう30年以上も前に、草津高原ベルツの森(当時まだそんなものは出来ていなかった)よりさらに奥にある「かんぽの宿」に宿泊したことを思い出した。

 当時、われわれ文学中年仲間4,5人で『水の会』という同好会を作り、年に一度か二度の小旅行を行なっていた。

 普段はそれぞれの仕事をしつつ、電話や手紙で行き先や日程を打ち合わせ、嬉々としながら電車やバスに乗り込んだものだ。

 宿で酒を酌み交わしながら文学談義に耽る。

 翌日の昼前、今ではベルツ通りと名付けられている道を、数人で道草しながら草津のバスターミナルまで歩いて戻った記憶が昨日のことのようにたどれる。

 たしか季節は秋だったような気がする。

 一緒に歩いた仲間のうち、残念なことにすでに3人が鬼籍に入っている。

 歳月を数えると遥か昔のことのようだが、それぞれが身に付けていた帽子やチョッキ、ザックの色までが浮かんできて、腕がぶつかった感触まで鮮やかに蘇る。

 

 

 ベルツの森に迷い込んだお陰で、懐かしい友人たちとの交流を思い出すことができた。

 この道の行き止まりに確かに存在していた「中年の宿」は、現在も営業しているのだろうか。

 調べればすぐにわかることだが、調べろという指令はどこからも出ていない。

 今ある記憶のうちに留めておけということなのだろう。

 行き止まりからぼちぼち引き返す、なんだか妙な暗示にかかったようだ。

 

     (おわり)

  

 

   

 

   

 

  

 

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2 コメント

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そういえばたしかに5人で草津へ (知恵熱おやじ)
2017-04-29 20:16:47
読ませていただいて思い出しました。

水の会の仲間5人であちこち気ままな旅をしたっけなあー

何も決めないで行く旅なんて、今考えると最高の贅沢だったんですね

草津もそんな中のひとつでした
そこでたまたま見ることになった湯もみの女性たちの中の一人の姿から、確か窪庭さんは「一編の暖かい短編小説」を生み出して『凱』誌上で発表し皆を驚かせたのでしたね。
あれは心に滲みる作品でした。

そして河原に噴き出す温泉をたどった散策の途中で出会った「ベルツの胸像」によってそこが美容水ベルツ発祥の地だと知った・・・

ベルツの杜を紹介する文章から、自分じゃとっくに忘れていたようなそんなことまで記憶の奥底から手繰り寄せられました。

不思議ですね・・・記憶ってのは

楽しませていただきました。ありがとう!
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記憶からすっぽり抜け落ちて (tadaox)
2017-04-30 16:36:22
(知恵熱おやじ)様、さすがに色々のことを覚えていますね。
ぼくは散策の途中で出会ったという「ベルツの胸像」の記憶がすっぽり抜け落ちていました。

それと、そのとき「湯もみショー」の会場で見とれた手踊りから短編小説のテーマを思いついたことも。
今なら、ありありと思い出せるのですが・・・・。
そうだ、読み返してみよう。

ありがとうございました。
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