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(黒山三滝)
森林公園まで百合を見に行くはずが、道路の混雑と暑さに嫌気がさして急遽『黒山三滝』に行き先を変更した。
ちょうど毛呂山のあたりを走っていたので、あっという間の心変わりであった。
それでも黒山三滝への案内は、北軽井沢通いの幹線道路交差点で見かけ、一度は行ってみたいと思っていた。
だから、いざ行くとなると、にわかに期待が膨らむのだった。
越生では季節ごとに梅やらツツジを楽しませてもらったが、今回初の黒山三滝詣でと相成ったわけである。
左折してけっこう奥深くまでクルマを走らせると、顔振り峠への分岐があって、そこを過ぎると山の顔つきが険しくなってくる。
黒山と呼ばれるだけのことはあって地層も古そうだし、岩石とともに杉の枝が覆いかぶさってくるようだ。
山全体が暗く、湿気もつよい。
これより登山道と思われる入口近くに無料の駐車場があったので、そこに停めて滝をめざす。
滝まで15分と書いてあって拍子抜けするも、実際に歩いてみると上り坂を行く身には有難い距離であった。
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最初の滝は「天狗滝」というらしい。
かなり滑りそうな岩の足場を登ったその奥に、いかにも修験の場所にふさわしい滝があり、レンズの曇りを気にしながら写真を撮った。
後から思うと、この滝が一番素朴で信仰のにおいがする。
全体にシダ類が広がっているのは、日陰であることとムッとする湿度のせいだろう。
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途中、イワナを焼く店を通り過ぎ、次の滝をめざす。
立ち寄る客もなく、少しばかり気兼ねをしつつ当方も素通りしてしまった。
思うに、飯のない焼きイワナだけの店で、行きに注文して帰りがけに立ち寄るよう指示する方式が、初めて訪れた客を戸惑わせる気がする。
それに、イワナ一尾の値段も表示されていなかったか、見落としたか。
どちらにせよ、商売のやり方としてはもう一工夫必要な気がした。
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「あと二つの滝がある」と勇んで登ったら、まず男滝が岩肌の上に見え、朱塗りの短い<めおと橋>を渡ったところで女滝も見えた。
男滝・女滝を二つながら収めたのがこの画像である。
上部の男滝は激しく、その左下の女滝は優美でやさしげだ。
江戸時代には男女和合の願いから、吉原にゆかりの人びとが多く訪れたという。
この場所を人気スポットに仕立てた、何とかいう仕掛け人がいたらしい。
修験道の聖地でもあるから、今風にいえばパワースポットということだろう。
いつの時代にも、特別の気を授かりたい老若男女がいて、あっちだこっちだと浮きたっているのだ。
何百年経っても滝は変わらず降り注ぐが、人間様は喜怒哀楽をにじませつつ、いつしか世代を代えている。
ばかばかしいようであるが、そこが生き物ならではの有難さだ。
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男滝の美しい飛沫を見ていると、ほんとうは滝も人間のように喋ったり、念じたりしたいのではないかと擬人化してみたくなる。
何百年語りかけられ、微細な粒子に写した気があるならば、滝も人の仕組みにのって答えを伝えてやりたいのではないか。
束の間覗いた陽光の幻惑が、気まぐれな訪問者にもたらしたオアソビであった。
(おわり)
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読んでいて不意にに思い出しました。
たしかに夜は怖い感じでしょう。とくに幼い者にとっては・・・・。
黒山鉱泉旅館はいまも営業していて、これから夏休みにかけて賑わうんじゃないでしょうか。
案内板にもあった通り、ここから顔振り峠へ抜けるハイキング道もあるので、義経同様うしろを振り返りながら景色を楽しんだのかも?
いい思い出ですね。ありがとう。
心惹かれる深山幽谷。
霊験あらたかな感じもするでしょう。
おまけに男滝と女滝が備わっているなんて! (実は小生、滝に男と女があるなんて知りませんでしたが)
それと、目的地を逸れ、こんな山中に潜り込んでいくあたりは、さすがですね。
ただ、イワナを売る店を通り過ぎてしまったのは、たとえ商売下手とはいえ残念だったような気がします。あれを焼いたのを食らいつくには、もってこいの場のように思えるだけに。
それにしても、気持ちのいいハイキングを一緒させてもらったような読後感でした。
御岳渓谷の食堂で、塩焼きのイワナを食って以来なのに、いま思えば残念。
ところで、ぼくも羊歯の群生を見たとき、知恵熱おやじさん同様、丑さんの顔を思い浮かべました。種類は知りませんが、このあたりでは一般的なのでしょうか。
コメントありがとう。