余波
「対話」
夜半
存在の涯から
ぼくの頭皮を吹き起こし
心をじっとりと汗ばませた
嵐の不安よ
ぼくは男だが
捲られた皮膜が
パタパタと蒼白の
リズムを打ったとき
母たちが恐怖の底に延べた
子守唄の余韻を
こだわりなく
沐浴した
過ぎ去った郷愁の窓を開ける
余波の明け方近く
とび散る雲の
しぶきを浴びて
屋根にしがみつく
おびただしい蟹の仮死
沈黙から
とつぜん起ちあがる
樹々の黒い絶叫は
見えない獲物にとびかかる
鰐の投影
くりかえし虚空を噛み
そして
声のない悲鳴が
空に満ちてしまった時
窓枠から
一枚の被写幕がずり落ちる
目も二つ
耳も二つ
ぼくはずっと前から
この童謡を知っていた
ぼくの頭皮を捲って去った友よ
きみとぼくとは
あらゆる顔の相対だ
真底からの
憎しみも愛しさも
ぼくたちの間では
やがて遊戯になる
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