どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム191 『野生のシャガに見守られ』

2018-04-07 18:38:34 | ポエム

 

     シャガ

    〈城跡ほっつき歩記)より

 

 

 

 

  最晩年の男を迎えてくれたのは

  日陰の崖に自生するシャガだった

  鎌倉の道は平坦に見えてもどこか坂

  真っ直ぐに立ってもなぜか傾く

 

  しっかり歩けよというのだろうか

  ちゃんと背筋を伸ばせというのだろうか

  何百年を生きてきたシャガは傾きもせず

  おぼつかない年寄りをひらひらと笑う

 

  鎌倉の歴史はいくさの歴史

  どこを向いても小高い山と暗い森

  交通の各所に待ち受ける切通しや隧道

  理知的な細面と束ねた髪が目立つ女性たち

 

  豊かな農産物には縁遠い急峻な地形

  この山あいにこもって戦に備えた坂東武士

  頼りにするのは天然の防壁と女房たち

  つましく工面する野と海からの収穫物

 

  人の資質は環境がつくる

  おおらかな川が流れる街にはおおらかな人

  豊かな海の町には豪快な男たち

  崖と切通しの街には質実剛健の気風

 

  坂道と階段が目立つ街に住んで気づくのは

  早々と老いぼれてはいられない現実

  最晩年などとうそぶいた男を見下ろして

  斜面に群生するシャガがひらひらと笑う

 

 

 

 

 

 

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4 コメント

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悠久のシャガたち (塚越和夫)
2018-04-07 20:43:36
こんばんは。

このたびは群生するシャガに着目いただき有難うございます。
見かけはとても華麗な姿ですが、雪国での豪雪にもめげることのないずしりとした骨太さを秘めております。

鎌倉を訪れましたのはもう20年ほど前になります。
切通しや孟宗竹の落ち着いた佇まいが甦ってまいりました。
古い時代に中国から渡来したと考えられておりますが、きっと滅亡した鎌倉幕府北条氏一族もきっとシャガの群落を目にしていたに違いないと思いました。

下記の説明は拙サイトの内容を補足修正したものです。
-----------------------------------
アヤメ科アヤメ属の多年草で、草丈は概ね40センチぐらい高さになります。
一般には日向でも普通に生育していますが、湿り気の多い寧ろ半日蔭または日当たりの良くない場所が生育に適しているように感じます。

山地などでは斜面の林床などに大群生している事例をよく見かけることがあります。
実際埼玉の飯能や山形の置賜地方など、この時期ですと行く先々で野生の群落に出会えます。
薄暗い山道の林床でこの群落を目にしますと、そこには幻想的にも思える世界が広がっていることもあります。

一つの花の命はたった一日限りなのですが、結構次から次へと開花していきますので、ついついそうした特徴を見過ごしがちにもなってしまいます。

所謂三倍体植物のため、実を結ぶことはありません。
このため根茎からオリズルランと同じように細いランナーを出して増殖します。
花の印象とは異なり、見かけによらず頑健な常緑多年草で、雪の多い地方でもしっかりと我慢強く冬越しができるようです。
返信する
シャガに見蕩れて (tadaox)
2018-04-08 19:00:05
(塚越和夫)様、今回もまた魅力的な画像と解説を利用させいただきました。
正直のところ、シャガが群生している日陰の斜面に出会った時は、しばらく見蕩れていました。

ほの暗い中に、シャガの花がぽうっと花開いている光景は、塚越さんのおっしゃるとおり幻想的な気分に誘われました。
家の裏にも数株のシャガが咲いていて、観察してみると一つの花の命は一日ということですが、花茎には下から上に向けて6,7個の予備軍が待機していて、これならなかなか咲き終わることはないなと安心しました。

またシャガが三倍体植物ということを教えていただき、植物の不思議と規則性を勉強いたしました。
いろいろのこと、ご教示ありがとうございました。
返信する
鎌倉の歴史は戦の歴史 (ウォーク更家)
2018-04-12 12:30:08
先週、お花見に鎌倉を訪れました。

残念ながら、もう花吹雪と葉桜でした。

坂東武士や鎌倉五山の僧侶たちは、どの様な思いで花吹雪を眺めたのでしょうね。

鎌倉の歴史は戦の歴史、鶴岡八幡宮では流鏑馬の準備中でした。

夕方、鎌倉に住む友人と、崖と切通しの散歩道を歩いて来ました。
友人は、この散歩道が気に入り、鎌倉を終の棲家に決めたのだそうです。
返信する
心に残る切通しの道 (tadaox)
2018-04-12 19:13:14
(ウォーク更家)様、桜にはちょっと遅かったようですね。
先日まで鎌倉祭りという行事をやっていましたが、流鏑馬もその流れだったのでしょうか。

鎌倉を終の棲家と決めたお友達は、変化に富んだ地形に惹かれたようですね。〈ことに崖と切通しの散歩道)
新参者の小生にも、鎌倉には心に残る道が多いように感じられます。

引越しの荷物整理などで、バタバタする毎日。
すっかりご無沙汰してしまいましたが、これからの季節は散歩の報告も出来るかと思います。
ご訪問ありがとうございました。

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