どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム(279) 『叱られて』

2021-01-08 00:33:46 | ポエム
忍び寄る冬の夕暮れ時
畝の陰から急に立ち上がる風のように
無防備な胸元に潜り込む「うた」がある

叱られて 叱られて
あの子は町までお使いに・・・・
何て悲しいうただろう あの童謡は

叱られたことも悲しい
叱られた理由がわかることも
きっと 悲しみのもとなのだ

あれは 夏休みのはじめ
ぼくはお腹をこわして臥せっていた
だが 耳には祭囃子が聞こえてくる

お祭りを見たい 反対する親に懇願した
夜店で 何も買ったりしないから
握った小銭を隠してふらふらと家を出た

同級生を見つけて 一緒に屋台を回った
なんという色とりどりの誘惑よ
お面に りんご飴に ポン菓子など

月光仮面は 小遣いでは手が届かない
りんご飴やボン菓子は食べられない
だが 何かを買わずにはいられない

ぼくはアイスキャンデーを手にして
はぐれた友達を探した
滴り始めた氷菓を早くあげたかったのだ

目の前に父親がいた
こらッ 見つかったのだ
あれだけダメだと言ったろう

激高する父親の手のひらが飛んで来た
違うよ トモちゃんにあげるんだ
まだ そんなことをいうか

ぼくは逃げた 父の形相が怖かった
アイスを手にしたたまま畑を突っ切った
無我夢中で隠れたのが茶畑だった

首根っこをつかまれて引きずり出された
わあ かゆいかゆい
チャドクガの幼虫に刺されたのだ

悲しかった 痒かった
情けなかった つらかった
父親の心配をずしりと受け止めた

𠮟られて 叱られて 
あの子は町までお使いに・・・・
叱られた子はトボトボと歩くしかない

歩きながら 心の内をのぞき込んだろう
その子の悲しみが 哀しかった
叱られた子と 叱った親の心の内が

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6 コメント

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子どもにはわからない・・・・ (tadaox)
2021-01-26 01:36:17
ウォーク更家さんは、進駐軍との出会い経験者ですか。
僕は疎開しちゃったので、ジープもチョコレートも知らないんですよ。
でも、お父さんのことは、子供にはわかりませんよ。
お母さんが怒るのは当然でしょうが、子供は理不尽を経験して育っていくのですね。
返信する
ギブミー チョコレート (ウォーク更家)
2021-01-25 12:38:57
アイスキャンデーを手にしていたら、激高するお父さんの手のひらが飛んで来たんですね。

私の場合は、チョコレートを手にしていたら、激高する母親の手のひらが飛んで来ました。

私の幼少期は、熊本市内でも、アメリカの進駐軍がジープを乗り回していました。

所謂「ギブミー チョコレート」の時代で、私は、進駐軍がジープからばら撒いたチョコレートを喜んで拾いました。

家に持ち帰り母に見せると、目から火花が出るくらいに殴られ、痛かったのでよく覚えています。

父は職業軍人で公職追放になったときですから、母は悔しくて耐えられなかったのでしょう。

母に殴られたのは、あの1度だけです。
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コンと狐が・・・・ (tadaox)
2021-01-08 22:04:42
(たか)さん、ありがとうございます。
ほんとに寂しい歌ですね。
子供の頃から今に至るまで、ずーっと耳の奥に残っているんですよね。
たかさんも、お父さんを思い出されたようですが、旋律と詞が溶け合ったような寂しさで、心の奥にしまわれた記憶を掘り起こすんでしょうね。
ご指摘の「コンと狐が・・・・」には、たった一人、枯野の中に取り残されたような寂寥感がありますね。
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tadaoxさん、こんばんわ (たか)
2021-01-08 20:49:56
あの歌は旋律も詩も何であんなに寂しいのでしょう。
どうしても子供時代の遠い記憶を探りたくなってしまう歌ですね。
私の父は私が2歳の時に他界しましたから
兄や姉から聞く父親像しかありません。
母は滅多に叱りませんでしたので、のほほんと育ってしまいました。
それでも「叱られて」の歌は何故か心を締め付けます。
「コンと狐が鳴きゃせぬか」・・・更に寂しさを募らせますね。
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埋火のように (tadaox)
2021-01-08 11:25:17
(のり)さん、おはようございます。
ぼくらの子供時代には、赤痢や疫痢がけっこう多かったから、親は心配したんでしょうね。
子供の欲望は抑えられないとしても、今頃になって親の心をのぞき込む愚か者です。
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おはようございます(^^♪ (のり)
2021-01-08 09:13:01
叱られた子供の心と叱った親の心・・・
どちらもジ~~んときますが、
今は親の悲しみの方に寄り添いたいです
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