女の子が爆発した
なんという絵空事か
こんな空想をしたのは 誰だ
悲嘆と嘔吐を一緒くたにして
世界を腰砕けさせようというのか
梶井基次郎の檸檬は 手榴弾だ
青春の甘い想念に驚いたものだが
女の子には甘える親もない
目には砂漠の色を浮かべ
絶望の影さえ よぎることがない
女の子が また爆発した
なんという空間だ
宇宙はいつ歪んだのか
アラーよ教えてくれ
時はそっけない素粒子の集まりなのか
湿気のある思想たちよ
ウェットな土壌に文字は健在か
かの国のレモンは乾いている
身体に果実を巻いた女の子は
哲学の崩壊を遂行しつつある
ベールは 真実を隠すため?
敬虔な広場には 虚構が忍び寄る
あらわな瞳は 何を運んだのか
陽炎のように揺らめく 女の子の影
痩せこけた二本の足に 地球が乗っている
煙とともに立ち昇る十歳の記憶
アラーよ この者をどこへ召しますか
虚構のできごとは 虚空へ撒きますか
時空の裂け目へと導きますか
メビウスの輪に血痕一滴垂らしますか
ああ すべては絵空事だよね
空に描いた戯画なんだよね
花火だってドドンと爆ぜるんだもの
女の子が爆発したって
この世の芯が吹き飛んだわけじゃないよね
* 梶井基次郎の『檸檬』は、青空文庫で読めます。
(『爆発したレモン』2015/01/14より再掲)
その子はどんな気持ちでレモンを抱きしめていたのか
想うだけで辛いなあー
考えることすらしないまま、さまよっているのでしょうか。