倉淵から長野原へ向けて
クルマを走らせていると
辺りは次第に暗くなってきた
かやぶきの郷への分岐を過ぎ
いよいよ須賀尾峠へ差し掛かる頃だ
左右の樹木で視界が遮られる
下りにかかるといっそう暗さが増す
樹林に隠された丸岩城址も遠くない
真田と北条の攻防もすでに薄闇の中
すれ違う対向車もない未舗装路
ライトを上向きにして
慎重に車を転がしていた
とつぜん前方で何かが動いた
スピードを緩めて目を凝らすと
なんと3頭の鹿がこちらを見ている
ライトを反射するビーズのような瞳
茶色の肌に白の斑点が浮かび上がる
耳を立てた瑞々しい体躯はまるで日本画
あっ バンビだ
同行の孫が声を上げる
山道に2頭の子鹿と親鹿が1頭
うわあ 美しい
神様が光をまとわせてそこに現したのか
子鹿は人を怖れることなく首を伸べたまま
しきりに神使いの故事が思い浮かぶ
八ッ場ダムに抜けようとする峠道で
この神々しい出来事は何のたくらみか
夏の吾妻山中で出会った親子鹿は
ライトを落とすと草むらに消えた
バンビちゃんバイバイ 孫が手を振る
鹿が姿を隠して間もなく
大揺れに揺れた八ッ場ダムの灯りが見えた
郡馬の山中は神の使いの通り道
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