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ロンドンのコヴェント・ガーデンにあるロイヤル・オペラハウスで、モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」を見たのである。
ここはすんごいゴージャスな建物ですぞ。王侯貴族が馬車で乗りつける雰囲気が漂っている。正面の階段を上がると、上にはシャンデリア、下には真っ赤な絨毯が広がっているのがまぶしい。入り口では両肩にタワシを載せたような(わかる?)、おもちゃの兵隊みたいな制服を着た係員が寄ってくる。すかすキップを見せると、途端にうやうやしい態度がぞんざいになり、裏へ回れ、と冷たく外へ指をさされた…。
座席は「平民」が座る3階席だったのだ。入り口が違う。裏へ回る。どこだ。薄暗いぢゃないか。まさか、これかよ。裏口は、ほんとにドアひとつだ。信じがたい粗末さ。
なかに入ると、非常階段みたいだ。つまり外から遮断されていて、ひたすら狭い階段をぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる登り続ける。疲れるぞ…。
登りつめて、ようやく視界が開けた。暗いところに人がぎっちりだー。あの狭い入口に狭い階段に、これだけの人間が通過してきたのかよw
大きなホールの天井が頭にぶつかりそう。舞台を見ると、はるか下方~。この作りといい、舞台への距離は、歌舞伎座の天井桟敷そっくりだ。違うのは、歌舞伎座では通(つう)が座る2列にすぎない場所が(しかも一幕見だぞ)、ここでは「平民」が隔離された大きな空間であることだ。
ここは階級社会の英国なのだ。「王侯貴族」が座る下のホールとは遮断されている。あちらからこちらは見えない。視界に入っちゃいけんのだ。舞台はひとつでも、観客席は2つの異なる世界。
トイレの話をしよう。(レディーはここまでにしておいてもよかですたい)
オペラの上演は長い。なので幕間の休憩時間にみなトイレに行く。だからその時間はひどい混雑。下階は便器がひとつずつあるのだろう。しかしここは平民の世界だ。男の場合、しきりがなく、横一列でやらされる構造になっているやつがあるのだよ。巨大な流しそうめんの装置が、腰のあたりにあるとでも想像してくれたまへ(オエッ)。
わたしは運悪く、下流の位置にいあわせてしまった。ぎっしりと並んだ男達の×××が上流から累積し、いまや恐るべき濁流となって目の前を通過しているのだ。
モーツァルトの美しい旋律もふっ飛ぶってもんだぜw(゜゜)w