さきち・のひとり旅

旅行記、旅のフォト、つれづれなるままのらくがきなどを掲載します。 古今東西どこへでも、さきち・の気ままなぶらり旅。

かもめが翔んだスナック 場末の酒場放浪記 九州1

2017年11月26日 | 

 ここは九州の田舎町。どんなに田舎でも、町であれば居酒屋やスナックはある。東北の被災地を訪ねたとき、津波で見事に更地になったエリアで復興の工事が始まったとき、最初に出来たのが居酒屋とスナックだった。工事現場の人が行くわけですな。トイレの次に作らなければならないのが飲み屋。それが人間の文化というものか。どんどこい、過疎。

 夜の暗がりを歩いていたら、ぼんやりと見えてきたのがスナックの看板の灯り。心のオアシスというか、暗い森のなかを彷徨っているときに見つけた妖怪の屋敷というか。なぜって、ありがちなのですが薄暗い店の中で、カウンターの向こうから「いらっしゃぁ~~い」とつぶやく声がお化け屋敷を思い出させるからです。

   

 その店も、ヴィジュアル的には箱もスタッフも「怪奇館」でしたが、ワンオペのヲヴァ~サンはひたすら明るく、とても感じのいいところでした。だいたい感じが良くなければ、昭和の時代から続いていたりはするわけないのです。

 そしていつものように、その町の栄枯盛衰の歴史、興味深い巷の裏話などを聞かせてもらうのでした。なにせ長年の常連客がひっきりなしに話をしにくる場所なので、面白い情報に満ち溢れているわけだ。

 しばらくすると、20代の若者、男子2人女子2人が入ってきた。ちょっと選ぶ店が違くねーか?ママさんは「先生!」と呼ぶので、どうやらその人たちは近所の学校の先生らしい。若者たちは楽しそうに話し、青年はカラオケで琉球の歌を元気よく歌った。次にカ~ワイイお嬢さん(でも立派な学校の先生)が昔なつかしい渡辺真知子の「かもめが翔んだ日」を歌い出した。それって、あなたのお母さんの十八番だったりするんじゃ?

かもめが翔んだ日

港を愛せる男に限り
悪い男はいないよなんて
私の心をつかんだままで
別れになるとは思わなかった 「別れ」じゃなくて「捨てられた」んでしょ?
あなたが本気で愛したものは 自分が振られたからって、女を愛せない男と判断する
絵になる港の景色だけ     とはおめでたいですな~。 
潮の香りが苦しいの
ああ あなたの香りよ
カモメが翔んだ カモメが翔んだ
あなたはひとりで生きられるのね だから~、今頃は別の女を口説いているよ?

 思いもよらない突然の別れの理由はわかりませんかー。それはね、あなたくらい純真なおバカさんだから、ちょっかい出したくなったのです。初めて口説かれて真に受けてしまったのでしょう?そういう子は口説くのは面白いけれど、ヤッちゃったら急速に関心が薄れるもの。騒がれちゃあうざいのはトンズラするのが一番。あなたはそいつが誇らしげに数える落とした女の数のひとつになっただけ。そいつのことを「ひとりで生きられるのね」なんておめでたい勘違いをなさっておりますが、そういうやつこそ次々に新しい女をひっかけていないといられないっつー性質なんだよ、きっと。というわけで、これは悲しいほどに男を疑うことを知らない純粋なお嬢さんの、切ない馬鹿さ加減を絶叫する歌なのである。かわいいお嬢さんにぴったりの選曲でした♪

 そうこうしている間に、同僚の先生方が到着した。総勢20人以上!×2000円で前払い。やせた眼鏡、絵にかいたような「うらなり君」が、「ドラゴンボール」を歌い出した。すると、他の外見そっくりなうらなり2号、うらなり3号、4号5号が立ち上がり、「ちゃ~ら~!へっちゃら~~!!!」とフルスロットルの大合唱。この選曲で同族の心の堅い結束かい!きっと数学、化学、物理の連中だ。

 アニメソングは続き、次に2号がものすごい調子っぱずれで「少年よォ神話になれェ!!!!」と絶叫。もちろん他のうらなり軍団も絶叫の合唱だ。カモメが翔んだお嬢さんのドン引いた心境が思いやられて痛ましい。



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