大工は昼間の疲れもあって、天井裏の酒樽に入ると、ほどなく深い眠りに落ち込んだ。するとニコラスとアリスンはそっと階段を降り、大工のベッドに入った。そこにはすばらしい歓楽とメロディーがあった♡
一方スケベ教会役員のアブソロンは、大工が留守をしているという噂を聞きつけて、夜が明ける前に出かけていって、アリスンに言い寄ろうと計画を立てた。窓から声をかけて、うまくいけばキスぐらいさせてもらおうと考えたのだ。いそいそと一番きれいな服をきて髪をとかし、口の香りをよくするために薬草をしゃぶり、さらに恋の妙薬と言われる草の葉を、舌の根もとにはさむという入念さだ。
アブソロンは大工の家の窓をそっと叩いてアリスンを呼び、言葉をつくして彼女を口説いた。アリスンはニコラスのいるベッドから窓へゆき、「近所の人に見られるから、接吻なら早くやってよ」とお尻の穴をつきだした。外はまだ真っ暗。アブソロンは、それにおもいきり口をつけてしまった。さてこの場面を引用。
This Absolon gan wype his mouth ful drie. アブソロンは、しっかり口をぬぐった
Derk was the nyght as pich, or as the cole, 夜はタールか石炭のように真っ暗だった
And at the wyindow out she putte hir hole, 彼女は窓にお尻の穴を突き出した
And Absolon, hym fil no bet ne wers, アブソロンは良いも悪いもなく
But with his mouth he kiste hir naked ers 口で彼女のむき出しのお尻をキスしてしまった
Ful savourly, er he were war of this. まったくわけがわからぬうちに
Abak he stirte, and thoughte it was amys, 後ろに飛びのいて、やられたと思った
For wel he wiste a womman hath no berd. というのも、女にひげがないのはわかっていたからだ
He felte a thing al rough and long yherd, 彼はざらざらして、長い毛のついたものを感じて
And seyde, “Fy! Allas! What have I do?” 言った。「ひゃあ!ああ、何てこったい!」
キザくさく原文を引用しましたが、古い英語の詩形だから面白いとゆーことをお伝えしたくて^^; この韻文はヒロイック・カプレットと言いまして、口に出して読みますと、弱強、弱強、とリズムがあり、二行ずつ同じ音で終わります。これを「韻をふむ」というわけですが、この言葉遊びにニヤリとさせられるんです。
コール、ホール(石炭、尻の穴)、ビァド、イヒャド(ひげ、髪の毛)・・・ぎひひ^^;
チョーサーは、この17,000行を超える大作を、ずっとリズムに乗せ、二行ずつ韻を踏んで書いてゆきました。700年以上も前に、10年以上をかけて書き連ねたのです。きっとニヤニヤしながら書いていたこの言葉遊びを、いまここで深夜にひとりギヒギヒ笑いながら読んでいるこの喜び。マニアックですねェ。「あら?女にヒゲはねえはずだぞ?」ときたもんだw(^益^)w
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