冬のアイリッシュ海
冬のアイリッシュ海は、大変荒れている。この季節は低気圧が常駐しているのだ。船は激しく揺れた。前後左右、そして上下に振り回される。船がぐっと下がったと思うとボーン!と跳ね上がり、一瞬あの不快な無重力状態になる。落下したと思ったら、船底がドーン!と海面にたたきつけられる。このわずか数秒間の出来事ワンセットだけでつらい経験なのだが、それが延々と続いているのだ…。トイレから帰ってきた友人が、次々に嘔吐している英国人を見たという。客席に座っている連中は、次第に忍耐だけの顔つきになっていった。突然船長からアナウンスが入る。ダブリンの港に入るためには、潮の関係で途中2時間ほど待たなければなりませんという…
こっ、この状況で、荒れる海の真っ只中で、2時間も時間調整をするといふのか!潮の満ち引きなんて、前もってわかっているはずぢゃないかーw(T益T)w じたばたしても始まらないのは考えるまでもない。
悪夢の航海は終わり、ダブリンの港に到着したときにはすっかり暗くなっていた。一日がかりの移動で、いよいよアイルランド上陸である。動かない大地がありがたい。このような侘しい冬の夜に到着するのが、この国にふさわしい雰囲気なのかもしれない。宿を探しに街中へ向かう。市内電車に乗ると、向かいの席にならんでいるアイルランド人がとても印象的だ。こちらの典型的なケルト人は、髪が薄い色の金髪で、肌は透きとおるように白い。そして瞳の色が、薄い青だ。「アイリッシュ・ブルー・アイズ」と呼ばれるこの目は、澄んだ空の色なのである。
さてセオリー通りに繁華街からややはずれた通りを歩くと、あるある、古い造りの「オブライエン」という宿があった。いかにもアイリッシュな名前。思ったより宿代は安くなかったが、かなり寂れているとはいえ、やや格調高い歴史を感じさせるホテルだったのだ。
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