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ところで僕は注連縄を作ることができます。というのは、故郷では小さい頃から家の納屋で一家総出で作るのが当時の習わしだったからで、その上に町家の注文依頼もたくさん受けていたので、一ヶ月くらいは夜昼無く注連縄を作る作業に追われていたのです。僕ら子供は裏白の綺麗な葉を近くの山で採ってきたり、出来上がった注連縄を自転車に乗せて受注先へ届ける役目でした。届けに行くとお菓子を貰えたりしましたが、小さいながらも家の稼ぎの足しに加わっている嬉しさのようなものを秘かに感じていました。子供は家族の中で何か役目を与えられる方が、少し文句を言いながらもきっと嬉しいものなのです。思えば昔の家族は“チームプレー”の大切さを学べる場だったようです。
藁で縄をなうと掌の油分が吸い取られてカサカサになってきます。冬の季節に若いお袋の掌に少しあかぎれが出来ていたのは、水仕事や体質のためばかりではなく、注連縄作りに精出していたからなのでしょうか。