年月というものは否応なく過ぎて行く。仕事仲間だった牧野さんがなくなって十年は経ったと思われる。あの暑い夏の日、親友だった杉本さんと二人、あの坂を上って行ったことだけをはっきり覚えている。
仕事が激減し、「お父さんの年金頼りよ」と、淋しく笑った牧野さんの横顔・・・公務員だったのにTVの仕事がしたいからと転職。日参したけれど、TV局からは「募集がないから」と。
製版業・・・仕事は早くて丁寧、そつなくこなし、外注になっても月/50万に届くほどの稼ぎ。
「すごいね」というと、「夜も寝ないから」と驚愕の返事。
たまに外注仲間が鉢合わせすると、あちこちの会社の状況や近況を話し合うこともあった。
「A社は危ない、ユウテ(融通手形)切っているらしいわ」
「B社もね、社長が『夜眠れない』って言っているわ。借金で首が廻らないのよ。パートのおばさんにまで『金を貸してくれ』って、ありえない話でしょう」
「わたしたち、どうなるのかしらねぇ」
「・・・」
この会話以降、顔を合わせることもなく、仕事仲間とはそれぞれ不明状態が続いている。
ただ一人連絡しあっていた牧野さんに先立たれ、年賀状で細いつながりを保っていた関さんも、数年前に他界。
その牧野さんの友人の杉本さんとは年に一度の電話。(十年も経ってうっとおしいかも知れない)と思いながら、それでも命日になると電話。
「今度、会いましょう」どちらからともなく出された提案。(えっ、いいの?)
日の出町駅から歩いてきた杉本さん、髪を金髪にし、ガガ風なスタイル。(この人とは深くて渡れない川があるな)と思ったほどの美形、異端。
その杉本さんが先日、段差もないようなところで転倒したと聞いて
「長い足も上がらないことがあるんだ」とすっかり共感。
「でも、わたしなんか、階段を四つん這いになって上がることもあるわ」と、膝の悪さを強調しフォロー。
「きっと、○○で逢いましょうね」
「それまで生きていたらね」と、彼女の返事。
お互いもっと年を取り、外出不能になる前に是非、ぜひ!お逢いしましょう。
仕事が激減し、「お父さんの年金頼りよ」と、淋しく笑った牧野さんの横顔・・・公務員だったのにTVの仕事がしたいからと転職。日参したけれど、TV局からは「募集がないから」と。
製版業・・・仕事は早くて丁寧、そつなくこなし、外注になっても月/50万に届くほどの稼ぎ。
「すごいね」というと、「夜も寝ないから」と驚愕の返事。
たまに外注仲間が鉢合わせすると、あちこちの会社の状況や近況を話し合うこともあった。
「A社は危ない、ユウテ(融通手形)切っているらしいわ」
「B社もね、社長が『夜眠れない』って言っているわ。借金で首が廻らないのよ。パートのおばさんにまで『金を貸してくれ』って、ありえない話でしょう」
「わたしたち、どうなるのかしらねぇ」
「・・・」
この会話以降、顔を合わせることもなく、仕事仲間とはそれぞれ不明状態が続いている。
ただ一人連絡しあっていた牧野さんに先立たれ、年賀状で細いつながりを保っていた関さんも、数年前に他界。
その牧野さんの友人の杉本さんとは年に一度の電話。(十年も経ってうっとおしいかも知れない)と思いながら、それでも命日になると電話。
「今度、会いましょう」どちらからともなく出された提案。(えっ、いいの?)
日の出町駅から歩いてきた杉本さん、髪を金髪にし、ガガ風なスタイル。(この人とは深くて渡れない川があるな)と思ったほどの美形、異端。
その杉本さんが先日、段差もないようなところで転倒したと聞いて
「長い足も上がらないことがあるんだ」とすっかり共感。
「でも、わたしなんか、階段を四つん這いになって上がることもあるわ」と、膝の悪さを強調しフォロー。
「きっと、○○で逢いましょうね」
「それまで生きていたらね」と、彼女の返事。
お互いもっと年を取り、外出不能になる前に是非、ぜひ!お逢いしましょう。