『恋人たち』
白い布で頭部を覆っている二人、男と女。赤い着衣、黒い紳士風の着衣から男女の判別が可能であるが、必ずしもその見当が確かであるとは限らない。
思いこみ、通念、二人がより添い、キスをするのを見て『恋人たち』(であるに違いない)と決定づける。しかし、それすら怪しいかもしれない)。二人を見て(たち)と複数にするのも肯けない。
頭部(髪形、顔)には男女を決定づける要素があり、それを隠蔽すれば人間であるかもしれないという感想のみが残るはずであるが、わたしたち(鑑賞者)はすでに足りないものを補うことを学習しているため、白い布を外すことも可能である。
そして『恋人たち』は、相手の本性を確認することなく感覚的に《愛》を錯覚する。
写真は『マグリット』展・図録より