今日のお月様
私はツヴァイクの「マリー・アントワネット」を読んで以来、その所謂「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」(←誰かがつくったデマだそうだ。むしろ、そこらの女子や男子に本当にこういうことを言いそうな人はいる)の人に興味がある。最近、ツヴァイクの本をめくりなおしたが、高校かそこらのときに、なぜこの本に感心したのかよく分からなくなった。ツヴァイクがマリーを平凡人としてえがいているのは確かだが、ほかの王侯貴族や革命勢力の連中に対してもそうなのである。たぶんツヴァイクは特殊と思える事柄のなかに平々凡々な側面を見出すのが得意なタイプなのであろう。研究者でもこういうタイプが結構いるけれども、最近私は、そういうやり方に飽きてきた。ただ、この本から生まれた「ベルサイユのばら」になると、全てが特殊に描かれようとしているのであって、これはこれで、これは現実じゃあないな、革命への空想的興奮がもたらしたものだな、と思う。
ということで、最近注目しているのが、Elisabeth Vigee Le Brun である。この人はマリーのお気に入りの肖像画家であったが、マリー逮捕の夜パリを脱出、ロシア、イタリアなど、ヨーロッパを渡り歩いた、王政復古でやっとフランスに帰るが、そのあともスイスに行ったりふらふらしている。そんな過程で、貴族たちの肖像画などを膨大な量描きまくって生涯をおえた人、らしい。こういう人物に私は興味がある。というわけで、上のような洋書まで買ってみた訳だ。彼女はマリーの肖像を描くときに、二重顎を苦労して消しているとか、あるルブランの肖像画について、とても35歳とはおもえん、年齢詐称にもほどがあるなどという意見もあるが、ようするにみんなの総意としては、彼女
はすごくかわいいの絵はすごくうまい、といったところである。