★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

吾身はすべて火炎なり

2022-10-04 23:19:10 | 文学


砕かば砕け河波よ
われに命はあるものを
河波高く泳ぎ行き
ひとりの神にこがれなん

心のみかは手も足も
吾身はすべて火炎なり
思ひ乱れて嗚呼恋の
千筋の髪の波に流るゝ


――島崎藤村「おくめ」


ウルトラマンにもよく火炎をはく怪人が出てきた。そのころは多くの人が煙を吐いてくらしていたし、工場の煙突からもけむりが常に出ていた。最近はゴミも落ちていないが、火もあまり見なくなっている。我々がやる気のない人間になっているのも、炎を模倣しようとしていないという事情があると思う。ことに恋は、炎の模倣だったのではなかろうか。