黒人と白人のハーフの米兵の父と琉球人の母の間に生まれ、女なら誰しも呆然と見とれる美貌の持ち主で人を何人殺しても決して捕まらない強運の持ち主伊禮ジョーが、フィールドワークで沖縄を訪れた大学院生多田耀子と濃密な性関係を持ちながらのめり込んでいき、キャンピングカーで北海道まで行く様子を描いたヴァイオレンス系官能小説。
この作者に度々登場する女が群がりやりたい放題のことをしても制裁を受けることなくいられる主人公による、万能感・至福感を、読者は共有できるのでしょうか。何度も書かれるからには、読者の支持・ニーズがあるのだと思いますが、私には男の妄想の気恥ずかしさが先に立ちます。
この作品では、そのジョーがごくふつうの大学院生に入れ込み、そうするうちに毒抜きされて次第にその神性を失っていくことになりますが、そのあたりは万能の主に自己投影できない読者層の嫉妬心に応えたのかもしれません(私には、「愛と誠」で母親の愛に接した太賀誠が凄みを失ってあっさり砂土谷峻に刺されて砂土谷に驚かれるみたいなイメージと重なりましたが・・・)。
耀子の恋人、つまり寝取られ男の中年新人作家忠彦の冴えない飄々とした姿が、意外に味わい深い。このあたりは、中年男性読者層に配慮したのか、作者自身の投影なのか・・・
花村萬月 祥伝社 2011年8月10日発行
この作者に度々登場する女が群がりやりたい放題のことをしても制裁を受けることなくいられる主人公による、万能感・至福感を、読者は共有できるのでしょうか。何度も書かれるからには、読者の支持・ニーズがあるのだと思いますが、私には男の妄想の気恥ずかしさが先に立ちます。
この作品では、そのジョーがごくふつうの大学院生に入れ込み、そうするうちに毒抜きされて次第にその神性を失っていくことになりますが、そのあたりは万能の主に自己投影できない読者層の嫉妬心に応えたのかもしれません(私には、「愛と誠」で母親の愛に接した太賀誠が凄みを失ってあっさり砂土谷峻に刺されて砂土谷に驚かれるみたいなイメージと重なりましたが・・・)。
耀子の恋人、つまり寝取られ男の中年新人作家忠彦の冴えない飄々とした姿が、意外に味わい深い。このあたりは、中年男性読者層に配慮したのか、作者自身の投影なのか・・・
花村萬月 祥伝社 2011年8月10日発行