少年時代から魅力のない外見にコンプレックスを持ち「魅力的な男のムード」を得るために勉学に励んで経済力と人脈を得て美貌の妻耀子を迎えたが裸にして見るとそそられず寒々しい性交しかできないと不満に思って手当たり次第に不倫にいそしむと共に耀子を自分の知人の男と交わらせてみたいという欲求を持つ榊慎司が、女たちから常々誘いを受けるイケメンで食べることに執着するカフェ経営者小谷徳史とグラマーだが見劣りする容貌でそこにコンプレックスを持つ妻芙祐子をベニス旅行に招待するという設定で、その駆け引きと4人のベニスでの思惑と不機嫌な感情と欲望を描いた小説。
経済力を持つ夫を得て贅沢三昧の生活をしている皆が振り返る美貌の耀子は、少女時代のレイプと言うべき暴力的なセックスへの熱い思いに回帰し、他の男とのセックスには満足できず、夫とも寒々しい関係であきらめつつ、周囲を見下す存在と描かれています。イケメンで女たちに言い寄られ続けた徳史も食べることにしか興味がない無内容な人物と描かれていて、容貌にコンプレックスを持つ慎司の歪んだ欲望と芙祐子の羨望とフラストレーションを描きつつも羨望の対象となる二人の内面は実は虚しいという構図が見えるのですが、それにしても女性作者が描く主要な女性としては耀子には主体性や力強さがなさ過ぎるように思えました。
一見普通そうなあるいは幸せそうに見える夫婦ないし人物のズレや歪みといったものを描いているのだと思いますが、人物設定や舞台設定が普通人の、いや私の感覚と環境からはずれているので現実感を持ちにくく、物語の中には入り込みにくい感じでした。
青山七恵 講談社 2013年5月27日発行
経済力を持つ夫を得て贅沢三昧の生活をしている皆が振り返る美貌の耀子は、少女時代のレイプと言うべき暴力的なセックスへの熱い思いに回帰し、他の男とのセックスには満足できず、夫とも寒々しい関係であきらめつつ、周囲を見下す存在と描かれています。イケメンで女たちに言い寄られ続けた徳史も食べることにしか興味がない無内容な人物と描かれていて、容貌にコンプレックスを持つ慎司の歪んだ欲望と芙祐子の羨望とフラストレーションを描きつつも羨望の対象となる二人の内面は実は虚しいという構図が見えるのですが、それにしても女性作者が描く主要な女性としては耀子には主体性や力強さがなさ過ぎるように思えました。
一見普通そうなあるいは幸せそうに見える夫婦ないし人物のズレや歪みといったものを描いているのだと思いますが、人物設定や舞台設定が普通人の、いや私の感覚と環境からはずれているので現実感を持ちにくく、物語の中には入り込みにくい感じでした。
青山七恵 講談社 2013年5月27日発行