60歳定年時に再雇用を希望しないと言ったら引き留められなかったことに屈辱感を持ち、子どもの頃に捨てられた実父が認知症となって役所から連絡が来て時折面会に行かなければならないことに不満を感じていた田中がかかりつけの医師から適度な運動が必要と言われてその娘から社交ダンスの世界では男性が足りなくて困っていると懇願されてその気になり、社内政治をうまく泳いで部長になったが社長が交代して同期の者が取締役となって自分の先行きが暗くなり不満に思う川端が長年モテたいという思いと計算で検討していた社交ダンス教室通いを始め、IT企業を3年で辞めて会社を手伝うと言い出した息子を受け容れたが理屈ばかりで使い物にならないと舌打ちし続けている町工場の社長大塚が映画「Shall we ダンス?」を見てやってみたくなり、といったことで社交ダンスを始めた中高年初心者男性16名が、ダンスパートナーの妻を亡くしたばかりで失意に暮れる米山の下で社交ダンスの初歩の特訓を受けることとなり、それで社交ダンスにはまり…という小説。
ダンスそのものだけでなく、日常生活への不満から社交ダンスへと逃げたり気晴らしが必要となったおっさんたちが、ダンスやダンス教室での人間関係を通じて、不満を持っていた家族や会社関係者との関係をも見直し、そちらの方での問題も改善されていくという展開が、小説だからではありましょうけれども、読んでいて心地よく思えました。
桂望実 中央公論新社 2019年9月10日発行
ダンスそのものだけでなく、日常生活への不満から社交ダンスへと逃げたり気晴らしが必要となったおっさんたちが、ダンスやダンス教室での人間関係を通じて、不満を持っていた家族や会社関係者との関係をも見直し、そちらの方での問題も改善されていくという展開が、小説だからではありましょうけれども、読んでいて心地よく思えました。
桂望実 中央公論新社 2019年9月10日発行