ベルリン発ミュンヘン行きの164人の乗客を乗せた航空機がハイジャックされテロリストは7万人の観客が観戦中のサッカースタジアムに墜落させると機長に通告し空軍機が飛行進路妨害をしても警告射撃をしても反応しなかったため空軍機パイロットの少佐が「いま、撃墜しなければ数万人が死ぬ」と叫び航空機を撃墜したという事件について、被告人は有罪か無罪かを問う裁判劇の戯曲。
裁判劇の形ですが、7万人の観客の命を救うためならば164人の命を犠牲にしてよいかという観念的/哲学的な命題の論争を目的とする本です。
日本の刑法第37条には、このような場合に少佐の行為を正当化する「緊急避難」の規定(危害にさらされた人等を守るためにやむを得ず別の人に危害を与えることになってもそれを罰しないという規定)があり、弁護士にとって実定法上は(哲学的/倫理的には別として)あまり悩まずに答えを出せるのですが、ドイツでは近親者のための緊急避難の規定はあっても見知らぬ他人のための緊急避難の規定はないそうで(日本の刑法はドイツから受け継いだもののはずで、少しびっくりしました)、そこらから悩ましい問題提起のようです。
弁護士の眼には、現実の裁判での感覚とは違う観念的な議論に聞こえ、問題の立て方自体が、実務的でないように思えました。
そこは、私のサイトのモバイル新館で記事にすることにしました。→「テロ」( F.v.シーラッハ)を題材に刑事裁判を考える
原題:TERROR
フェルディナント・フォン・シーラッハ 訳:酒寄進一
東京創元社 2016年7月15日発行(単行本は2015年)
裁判劇の形ですが、7万人の観客の命を救うためならば164人の命を犠牲にしてよいかという観念的/哲学的な命題の論争を目的とする本です。
日本の刑法第37条には、このような場合に少佐の行為を正当化する「緊急避難」の規定(危害にさらされた人等を守るためにやむを得ず別の人に危害を与えることになってもそれを罰しないという規定)があり、弁護士にとって実定法上は(哲学的/倫理的には別として)あまり悩まずに答えを出せるのですが、ドイツでは近親者のための緊急避難の規定はあっても見知らぬ他人のための緊急避難の規定はないそうで(日本の刑法はドイツから受け継いだもののはずで、少しびっくりしました)、そこらから悩ましい問題提起のようです。
弁護士の眼には、現実の裁判での感覚とは違う観念的な議論に聞こえ、問題の立て方自体が、実務的でないように思えました。
そこは、私のサイトのモバイル新館で記事にすることにしました。→「テロ」( F.v.シーラッハ)を題材に刑事裁判を考える
原題:TERROR
フェルディナント・フォン・シーラッハ 訳:酒寄進一
東京創元社 2016年7月15日発行(単行本は2015年)