日本労働弁護団の中心メンバーによる労働法・労働事件の実務解説書シリーズの労働安全衛生法と労災関係の部分。
2008年に刊行された「問題解決労働法」シリーズの改訂版です。
第1章の「安全衛生」は、労働安全衛生法の規制の解説で、ふだんあんまり勉強しないところですし、特に5の「健康保持増進措置」や6の「労働者の危険防止措置、健康障害防止措置、職場環境措置その他の措置」についての説明はとても勉強になりましたが、記述が法律の解説書にありがちな条文の内容の列挙に近く、読むのがやや辛い思いでした。第2章以下の労災に関しては、実務上参考になる点が多く、特に各種の労災についての使用者の安全配慮義務の内容と根拠を解説する「具体的な事案における使用者の義務」(82~89ページ)、労災の要件の1つの「業務遂行性」についての説明(109~116ページ)などは大変参考になりました。
もっとも、業務遂行性に関する記述で出張中に「飲酒によって泥酔状態となって宿泊先の階段から転落して負傷した場合には、出張の際の宿泊に通常伴う範囲の行動とはいえず業務外と判断される(昭53.10.31裁決)」(112ページ)とされていることについては、大分労基署長(大分放送)事件の判決では業務遂行性が認められていることを紹介すべきだと思いますし、精神障害悪化の業務起因性について「特別な出来事」に該当する事実を要求する労災認定実務(行政の運用)を紹介しているところ(163ページ)では、行政訴訟で国・八王子労基署長(東和フードサービス)事件の判決で行政の不支給決定を覆す判断がなされていることや使用者を被告とする民事訴訟で精神病悪化の事案で「特別な出来事」を要せずに業務起因性(相当因果関係)を認める判決がいくつかあることも紹介すべきだと思います。
元方事業者・特定元方事業者の定義が書かれるべき33ページの注2、労災の療養補償給付の定義または内容が書かれるべき126ページの注1が欠落しています(参照先に該当する記載がありません)。39ページ16行目の「次の①から④まで」は「上の」または「前述の」の誤り、100ページ14行目の「①~⑦の合計額」は「④~⑪の合計額」の誤り、陸上自衛隊三三一会計隊事件最高裁判決の引用(77ページ)の「従前ならしめて」は「十全ならしめて」の誤りです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en2.gif)
佐久間大輔 旬報社 2016年2月10日発行
2008年に刊行された「問題解決労働法」シリーズの改訂版です。
第1章の「安全衛生」は、労働安全衛生法の規制の解説で、ふだんあんまり勉強しないところですし、特に5の「健康保持増進措置」や6の「労働者の危険防止措置、健康障害防止措置、職場環境措置その他の措置」についての説明はとても勉強になりましたが、記述が法律の解説書にありがちな条文の内容の列挙に近く、読むのがやや辛い思いでした。第2章以下の労災に関しては、実務上参考になる点が多く、特に各種の労災についての使用者の安全配慮義務の内容と根拠を解説する「具体的な事案における使用者の義務」(82~89ページ)、労災の要件の1つの「業務遂行性」についての説明(109~116ページ)などは大変参考になりました。
もっとも、業務遂行性に関する記述で出張中に「飲酒によって泥酔状態となって宿泊先の階段から転落して負傷した場合には、出張の際の宿泊に通常伴う範囲の行動とはいえず業務外と判断される(昭53.10.31裁決)」(112ページ)とされていることについては、大分労基署長(大分放送)事件の判決では業務遂行性が認められていることを紹介すべきだと思いますし、精神障害悪化の業務起因性について「特別な出来事」に該当する事実を要求する労災認定実務(行政の運用)を紹介しているところ(163ページ)では、行政訴訟で国・八王子労基署長(東和フードサービス)事件の判決で行政の不支給決定を覆す判断がなされていることや使用者を被告とする民事訴訟で精神病悪化の事案で「特別な出来事」を要せずに業務起因性(相当因果関係)を認める判決がいくつかあることも紹介すべきだと思います。
元方事業者・特定元方事業者の定義が書かれるべき33ページの注2、労災の療養補償給付の定義または内容が書かれるべき126ページの注1が欠落しています(参照先に該当する記載がありません)。39ページ16行目の「次の①から④まで」は「上の」または「前述の」の誤り、100ページ14行目の「①~⑦の合計額」は「④~⑪の合計額」の誤り、陸上自衛隊三三一会計隊事件最高裁判決の引用(77ページ)の「従前ならしめて」は「十全ならしめて」の誤りです。
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佐久間大輔 旬報社 2016年2月10日発行