フォトジャーナリストの著者が、学生時代の2006年に短期留学し2007年に再訪したガンビアでのジャーナリスト・新聞社に対する迫害、2007年に訪れた内戦中のリベリアの難民キャンプでの難民の様子、大学卒業後にフリージャーナリストとして2009年と2011年に取材したカンボジアでのHIV感染者の生活、2010年に取材したパキスタンでの硫酸被害者の女性たちの被害状況とシェルターでの暮らし、2011年に取材した東北と福島原発事故避難地域の被災と避難状況、2012年に取材したキルギスでの誘拐結婚と誘拐された女性たちの様子について、写真を交えてレポートした本。
結婚や交際を拒否したということで、相手の男や関係者から硫酸をかけられる女性が、支援団体の調査で年間150~300人、それもタリバン勢力が伸長するパキスタン西北部や都市遠方の村では被害を受けても警察に通報することも治療を受けることもできない女性が多いので氷山の一角(107~108ページ)、「田舎の村では被害は放置され、加害者に対する処罰が行われないことが多くある。たとえ加害者が逮捕や起訴されても、警察や裁判官が買収されたり、被害者が周囲の圧力に負けて被害申告を取り下げたりすることもあり、加害者が有罪になることは滅多にない」(110~111ページ)という記述には戦慄を覚えます。第6章で紹介されているキルギスではほとんど会ったこともない男性から誘拐されてそのまま結婚を説得され、「一度入った男性の家から出るのは『純潔を失った』と見なされ『恥』であると教えられてきた」故にあきらめざるを得ず結婚を受け入れる女性が多い、かつては親が決めた婚約者と結婚したくない故に思い合った男女が合意の上で誘拐の形をとった(実質は駆け落ち)ものが、今では男性が一方的に気に入った女性を誘拐しそれをキルギスの伝統と言っているという話も驚きます。女性の自由を認めず権利を抑圧する社会の下で信じられないような人権侵害が行われ、それが文化とか伝統などと加害者に都合よく正当化されて行く、それもますます悪くなっていく動きさえあることには強い憤りを感じます。
世界にはまだまだ知らないところが、光が当てられないところがたくさんあるのだと再認識させてくれました。
林典子 岩波新書 2014年2月20日発行
結婚や交際を拒否したということで、相手の男や関係者から硫酸をかけられる女性が、支援団体の調査で年間150~300人、それもタリバン勢力が伸長するパキスタン西北部や都市遠方の村では被害を受けても警察に通報することも治療を受けることもできない女性が多いので氷山の一角(107~108ページ)、「田舎の村では被害は放置され、加害者に対する処罰が行われないことが多くある。たとえ加害者が逮捕や起訴されても、警察や裁判官が買収されたり、被害者が周囲の圧力に負けて被害申告を取り下げたりすることもあり、加害者が有罪になることは滅多にない」(110~111ページ)という記述には戦慄を覚えます。第6章で紹介されているキルギスではほとんど会ったこともない男性から誘拐されてそのまま結婚を説得され、「一度入った男性の家から出るのは『純潔を失った』と見なされ『恥』であると教えられてきた」故にあきらめざるを得ず結婚を受け入れる女性が多い、かつては親が決めた婚約者と結婚したくない故に思い合った男女が合意の上で誘拐の形をとった(実質は駆け落ち)ものが、今では男性が一方的に気に入った女性を誘拐しそれをキルギスの伝統と言っているという話も驚きます。女性の自由を認めず権利を抑圧する社会の下で信じられないような人権侵害が行われ、それが文化とか伝統などと加害者に都合よく正当化されて行く、それもますます悪くなっていく動きさえあることには強い憤りを感じます。
世界にはまだまだ知らないところが、光が当てられないところがたくさんあるのだと再認識させてくれました。
林典子 岩波新書 2014年2月20日発行