日本経済の過去と現状について、統計を中心とする図表を付けて分析し解説する本。
1項目見開き2ページで、左側のページが図表、右側1ページで解説ですから、概観的なものが多くなっています。
国際関係や外国のケースについてはうまく行かないとハッキリ述べている点が見られますが、日本の政策については批判的な評価はせず、官僚と財界の側のスタンスで書いている印象です。
「世の中には、市場経済は弱肉強食の世界であるとか、自由無責任の体制であるとか、米国従属経済であるとかといって批判する人が多い。それらは誤解である」(154ページ)という記載にこの本の著者たちの姿勢がよく表れていると思います。
労働側弁護士としては気になる「雇用・労働」の項目では、非正規労働者の増大による格差の拡大を問題視しながら「ただ、非正規労働者の雇用条件を改善させるだけでは、国内雇用が減ってしまうかもしれない。正規労働者の優遇度を見直す一方、非正規労働者の雇用条件を改善することが必要だろう」(96ページ)として正社員の労働条件の切り下げを提案しています。この本には「日本は、主要先進国で単位労働コストが上昇しなかった、また、1990年代以降はかえって下がっている唯一の国である。これは、生産性の上昇があっても賃上げがほとんどなかったことを意味し、物価の抑制原因となってきた」(102ページ)という指摘もあります。このことからは、日本の企業・経営者がこれまで生産性の向上によって利益が拡大しても賃金は抑制し労働者の犠牲によって儲けてきたという事実があるのだから、本来はその利益で正社員にも非正規労働者にも賃上げをすべきと指摘するのが筋だと思います。それなのにそのことには言及せず、非正規労働者の待遇改善は正社員の犠牲の下に行うべきことをいうのは、ずいぶんと企業・経営者側に偏った記述だと、私には思えます。
宮崎勇、本庄真、田谷禎三 岩波新書 2013年10月18日発行
1項目見開き2ページで、左側のページが図表、右側1ページで解説ですから、概観的なものが多くなっています。
国際関係や外国のケースについてはうまく行かないとハッキリ述べている点が見られますが、日本の政策については批判的な評価はせず、官僚と財界の側のスタンスで書いている印象です。
「世の中には、市場経済は弱肉強食の世界であるとか、自由無責任の体制であるとか、米国従属経済であるとかといって批判する人が多い。それらは誤解である」(154ページ)という記載にこの本の著者たちの姿勢がよく表れていると思います。
労働側弁護士としては気になる「雇用・労働」の項目では、非正規労働者の増大による格差の拡大を問題視しながら「ただ、非正規労働者の雇用条件を改善させるだけでは、国内雇用が減ってしまうかもしれない。正規労働者の優遇度を見直す一方、非正規労働者の雇用条件を改善することが必要だろう」(96ページ)として正社員の労働条件の切り下げを提案しています。この本には「日本は、主要先進国で単位労働コストが上昇しなかった、また、1990年代以降はかえって下がっている唯一の国である。これは、生産性の上昇があっても賃上げがほとんどなかったことを意味し、物価の抑制原因となってきた」(102ページ)という指摘もあります。このことからは、日本の企業・経営者がこれまで生産性の向上によって利益が拡大しても賃金は抑制し労働者の犠牲によって儲けてきたという事実があるのだから、本来はその利益で正社員にも非正規労働者にも賃上げをすべきと指摘するのが筋だと思います。それなのにそのことには言及せず、非正規労働者の待遇改善は正社員の犠牲の下に行うべきことをいうのは、ずいぶんと企業・経営者側に偏った記述だと、私には思えます。
宮崎勇、本庄真、田谷禎三 岩波新書 2013年10月18日発行