サンゴの生態と、環境変化による「白化」現象の事例と原因等を説明し、サンゴ礁の保全の必要性等を論じた本。
造礁サンゴの多くは褐虫藻という単細胞の藻類を体内に取り込んで共生し、サンゴは褐虫藻の光合成により酸素と糖類などの有機物を得ることができ、さらには褐虫藻との共生が海水中のカルシウムをサンゴの骨格成分である炭酸カルシウムとして固定しやすくする、つまり造礁を促進する効果がある(22~25ページ)が、水温が高くなりすぎたり太陽光が強くなりすぎると褐虫藻が多くの活性酸素を作り出してそれがサンゴにとって危険なため、サンゴは褐虫藻を体外に放出したり消化してしまって共生を弱め(78~81ページ)、褐虫藻の色素がなくなるために白く見えるようになり、これを「白化」と呼んでいるそうです(64ページ)。水温の上昇や太陽光の強化で褐虫藻の活動度が上がるとサンゴに有害な活性酸素が大量に造られるために共生が維持できなくなるというのですが、そんな微妙な、危うい共生関係が、その共生関係を持ったサンゴを造礁サンゴの大半を占めるほど繁栄させる(そうでない種が淘汰されて滅び去っていく)に足る期間/世代に渡って維持されたというのは、とても不思議に/進化論的な説明として不自然に思えます。そう思って考えてみると、この本では、サンゴと褐虫藻の共生関係がいつ頃から始まったものかの検討はまったくなく、さらにいえばサンゴが地球の年代のいつ頃から生息しているのか、生命樹の中でどこに位置づけられるのか、生物分類の中でDNA等の検討で他のどの種と近縁にあるのか(分類の中での位置は、一応6ページに図はあるのですが、DNA等の検討にはまったく言及もされていません)等の生物学系の書物では今どき必須と言える類いの記述もまったくありません。サンゴについての研究はまだ歴史が浅くわかっていることが少ないのではないかと、素人目には感じられてしまいました。
サンゴがカラフルな蛍光色を発するのは、白化の過程でのサンゴの防衛なのだという説明もあります(76~78ページ)。水族館等で、カラフルなサンゴを見てうっとりするのは、サンゴにとってストレスフルな状況を私たちが誤解しているのでしょうか。編著者が1998年に慶良間諸島で目にして感動した色鮮やかなサンゴは死にかけた状態だったと後で知ったと書かれています(161ページ)。本当にそうなのか、サンゴがカラフルに見えるときはいつもそうなのかという問いも含めて、私たちのサンゴについての知識はまだまだ少なすぎるのではないかと感じさせられました。
中村崇、山城秀之編著 成山堂書店 2020年2月8日発行
造礁サンゴの多くは褐虫藻という単細胞の藻類を体内に取り込んで共生し、サンゴは褐虫藻の光合成により酸素と糖類などの有機物を得ることができ、さらには褐虫藻との共生が海水中のカルシウムをサンゴの骨格成分である炭酸カルシウムとして固定しやすくする、つまり造礁を促進する効果がある(22~25ページ)が、水温が高くなりすぎたり太陽光が強くなりすぎると褐虫藻が多くの活性酸素を作り出してそれがサンゴにとって危険なため、サンゴは褐虫藻を体外に放出したり消化してしまって共生を弱め(78~81ページ)、褐虫藻の色素がなくなるために白く見えるようになり、これを「白化」と呼んでいるそうです(64ページ)。水温の上昇や太陽光の強化で褐虫藻の活動度が上がるとサンゴに有害な活性酸素が大量に造られるために共生が維持できなくなるというのですが、そんな微妙な、危うい共生関係が、その共生関係を持ったサンゴを造礁サンゴの大半を占めるほど繁栄させる(そうでない種が淘汰されて滅び去っていく)に足る期間/世代に渡って維持されたというのは、とても不思議に/進化論的な説明として不自然に思えます。そう思って考えてみると、この本では、サンゴと褐虫藻の共生関係がいつ頃から始まったものかの検討はまったくなく、さらにいえばサンゴが地球の年代のいつ頃から生息しているのか、生命樹の中でどこに位置づけられるのか、生物分類の中でDNA等の検討で他のどの種と近縁にあるのか(分類の中での位置は、一応6ページに図はあるのですが、DNA等の検討にはまったく言及もされていません)等の生物学系の書物では今どき必須と言える類いの記述もまったくありません。サンゴについての研究はまだ歴史が浅くわかっていることが少ないのではないかと、素人目には感じられてしまいました。
サンゴがカラフルな蛍光色を発するのは、白化の過程でのサンゴの防衛なのだという説明もあります(76~78ページ)。水族館等で、カラフルなサンゴを見てうっとりするのは、サンゴにとってストレスフルな状況を私たちが誤解しているのでしょうか。編著者が1998年に慶良間諸島で目にして感動した色鮮やかなサンゴは死にかけた状態だったと後で知ったと書かれています(161ページ)。本当にそうなのか、サンゴがカラフルに見えるときはいつもそうなのかという問いも含めて、私たちのサンゴについての知識はまだまだ少なすぎるのではないかと感じさせられました。
中村崇、山城秀之編著 成山堂書店 2020年2月8日発行