産業革命期後のフランスにおける鉄道建設の歴史とパリのメトロ導入の歴史を解説した本。
フランスの技術者の技術・工学についての考え方、イギリス・アメリカの技術との間合いの取り方が興味深く思えました。
著者のテーマの鉄道建設への熱狂の中でパリがどうして歴史的な伝統を色濃く残す都市として生き残れたかについては、フランス全体の鉄道建設計画での国と都市と鉄道会社の利害の対立から各地とパリを結ぶ鉄道の終着駅がパリの中でばらばらになったこと、これを結ぶ路線の建設を主張する国と、国の介入をきらいパリ市民の利用を重視して市民の需要の多い路線を作ろうとするパリ市と、その間で動く鉄道会社や技術者たちの対立と妥協の産物としてメトロが構想・建設されていったという事情によるものとされています。一元的な都市計画によってではなく、様々なプレイヤーの利害対立と妥協を繰り返したことが、時間はかかり非効率ではあったものの結果的には妥当な計画を導いたという論旨には考えさせられます。議論を繰り返すうちに技術が発展したとか、その間に政治家が替わったとかの事情も影響していて、交渉と妥協を繰り返せば必然的にそうなるということではないとは思いますが。
北河大次郎 河出ブックス 2010年6月30日発行
フランスの技術者の技術・工学についての考え方、イギリス・アメリカの技術との間合いの取り方が興味深く思えました。
著者のテーマの鉄道建設への熱狂の中でパリがどうして歴史的な伝統を色濃く残す都市として生き残れたかについては、フランス全体の鉄道建設計画での国と都市と鉄道会社の利害の対立から各地とパリを結ぶ鉄道の終着駅がパリの中でばらばらになったこと、これを結ぶ路線の建設を主張する国と、国の介入をきらいパリ市民の利用を重視して市民の需要の多い路線を作ろうとするパリ市と、その間で動く鉄道会社や技術者たちの対立と妥協の産物としてメトロが構想・建設されていったという事情によるものとされています。一元的な都市計画によってではなく、様々なプレイヤーの利害対立と妥協を繰り返したことが、時間はかかり非効率ではあったものの結果的には妥当な計画を導いたという論旨には考えさせられます。議論を繰り返すうちに技術が発展したとか、その間に政治家が替わったとかの事情も影響していて、交渉と妥協を繰り返せば必然的にそうなるということではないとは思いますが。
北河大次郎 河出ブックス 2010年6月30日発行