国防総省の安全保障情報提供プログラムの開発会社のCEOマデリン・チャプマンが自宅で射殺され、以前身辺警護を担当しマデリンと肉体関係もあった元陸軍射撃教官エミリアーノ・ルイスが容疑者として逮捕されるが、ルイスは弁護人ポール・マドリアニに対し、軍歴での空白の7年間について答えようとせず、マドリアニは安全保障情報提供プログラムがらみの確執を調査しようとするが会社側の弁護士の抵抗で情報を得られず暗礁に乗り上げ…という展開のリーガル・サスペンス小説。
スティーヴ・マルティニ作品の久しぶりの日本語訳で、あまりに長く新作が翻訳されなかったのでもう全然チェックしておらず、ずっと気がつきませんでした。
いろいろな意味で、マルティニらしい作品です。法廷での証人尋問、検察側とのせめぎ合いで読ませる展開には迫力があります。マドリアニが努力をしながらも有利な証拠を得ることができずテクニックでしのぎ見せ場は作りながらも絶望的な状況に追い込まれる展開とそこからの逆転劇も、おなじみと言えますが、マルティニファンの期待に応えてくれます。逆転劇のトリッキーさ、悪役のやや小粒さ、悪役がわざわざマドリアニの前に出て来てマドリアニが命の危険にさらされるという点も毎度のパターンです。こちらは少し変えてもらった方がいいかもしれませんが。
私としては、法廷でのやりとりの描写だけで、十分に読む価値がある作品だと思います。マドリアニが見せる政府と巨大企業、企業側の弁護士の悪辣さとの対決姿勢も、庶民の弁護士としては共感します。
しかし、ミステリーとしての謎解きというか真犯人像とか、細かいところまでの目配りとか(どうでもいいとも言えますが、例えば「ルイスの公判を指揮する判事は、法廷の最後部に取りつけた固定カメラで審理を中継したいというケーブルテレビ二局からの申し出に屈服してしまっていた」(上巻330ページ)と書いていたのに、何の説明もなく「ギルクレストはすでに、ルイスの公判のあいだは法廷にカメラを入れないという決定をくだしていた」(上巻374ページ)となっていたりします)が少し残念に思えます。
スティーヴ・マルティニについては、初期の快進撃のあと、作品の中で作品作りに行き詰まっている様子を示唆し、ミステリー作家が期待に応えるのは大変だみたいなぼやきをして、その後日本語訳が出なくなっていたので、作品が書けなくなっていたのかと思っていたのですが、解説によると、未翻訳のポール・マドリアニシリーズがまだ5冊もあるようです。マルティニファンとしては、日本語版の出版が待ち遠しいところです。

原題:Double Tap
スティーヴ・マルティニ 訳:白石朗
扶桑社ミステリー 2011年2月10日発行(原書は2005年)
スティーヴ・マルティニ作品の久しぶりの日本語訳で、あまりに長く新作が翻訳されなかったのでもう全然チェックしておらず、ずっと気がつきませんでした。
いろいろな意味で、マルティニらしい作品です。法廷での証人尋問、検察側とのせめぎ合いで読ませる展開には迫力があります。マドリアニが努力をしながらも有利な証拠を得ることができずテクニックでしのぎ見せ場は作りながらも絶望的な状況に追い込まれる展開とそこからの逆転劇も、おなじみと言えますが、マルティニファンの期待に応えてくれます。逆転劇のトリッキーさ、悪役のやや小粒さ、悪役がわざわざマドリアニの前に出て来てマドリアニが命の危険にさらされるという点も毎度のパターンです。こちらは少し変えてもらった方がいいかもしれませんが。
私としては、法廷でのやりとりの描写だけで、十分に読む価値がある作品だと思います。マドリアニが見せる政府と巨大企業、企業側の弁護士の悪辣さとの対決姿勢も、庶民の弁護士としては共感します。
しかし、ミステリーとしての謎解きというか真犯人像とか、細かいところまでの目配りとか(どうでもいいとも言えますが、例えば「ルイスの公判を指揮する判事は、法廷の最後部に取りつけた固定カメラで審理を中継したいというケーブルテレビ二局からの申し出に屈服してしまっていた」(上巻330ページ)と書いていたのに、何の説明もなく「ギルクレストはすでに、ルイスの公判のあいだは法廷にカメラを入れないという決定をくだしていた」(上巻374ページ)となっていたりします)が少し残念に思えます。
スティーヴ・マルティニについては、初期の快進撃のあと、作品の中で作品作りに行き詰まっている様子を示唆し、ミステリー作家が期待に応えるのは大変だみたいなぼやきをして、その後日本語訳が出なくなっていたので、作品が書けなくなっていたのかと思っていたのですが、解説によると、未翻訳のポール・マドリアニシリーズがまだ5冊もあるようです。マルティニファンとしては、日本語版の出版が待ち遠しいところです。

原題:Double Tap
スティーヴ・マルティニ 訳:白石朗
扶桑社ミステリー 2011年2月10日発行(原書は2005年)