福島原発事故前、東京電力で原子燃料サイクル部部長や福島第一原発技術課の副長、日本原燃燃料製造部副部長などを歴任した著者が、福島原発事故を受けて東京電力や今後の原発問題を論じた本。
過去を振り返る場面で、下請の原発作業員がアラームメータを身につけずに線量の低いところにおいて作業をしていることがあった、東京電力の社員は作業がきちんと行われたかを最終確認しなければならず先に線量オーバーになっては確認ができないので全部の作業が終わってから入った(38~39ページ)と述べていて、元現場監督の故平井憲夫さんが1990年代に話していた現場作業の実態(作業員は記録上の線量を抑えるために線量計は外して作業している、東京電録の社員は被ばくしないように遠くの線量が低いところに隠れているなど)が裏付けられています。著者自身が現場時代に5年半で合計約100ミリシーベルト被ばくしたけれども退職後東京電力から体調について尋ねられたこともない(39ページ、76~77ページ)ということも書かれています。原子力計画課で安全審査を担当した時期に安全のために多重性を持たせていた機器のうち静的な機器、例えば格納容器スプレイ系のリングが2系統あったのをコスト削減のために1つにしたということが書かれています(48~50ページ)。「そのリングが壊れたら全然水が来なくなりますが、『壊れない』という論理です。そういうものを減らす理屈をこねてコストダウンして本当にいいのか、という思いはありました」(49~50ページ)とされています。そう思ったらその頃に言って欲しかったと思いますけど。玄海原発で問題となった世論誘導(やらせ発言)について、現職の頃自分も現実にやったとも述べています(80ページ)。2002年のトラブル隠しについて小泉訪朝に合わせてプレス発表し扱いを小さくしたことについて、「『東電の広報もやるな』と当時思いました。」(66ページ)という感性ですから、本当の意味での危機感・罪悪感はなかったのでしょうけど。
福島原発後のことについては、東電バッシングでは済まないといい(78~81ページ)、危険性ではなく核燃料サイクルが完結せず放射性廃棄物の処分問題がクリアできないことから原発をフェイドアウト(漸減)していくべきと論じています。東京電力で技術部門におり東京電力と日本原燃で核燃料サイクルを担当していた著者がそういうことの重みはあるものの、福島原発事故後の発言としてはそれほどのインパクトを感じません。
東京電力での過去の話の方が、私には興味深く、そちらの方をもう少し詳しく書いてくれた方がよかったかなと思いました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_yodare1.gif)
蓮池透 かもがわ出版 2011年9月20日発行
過去を振り返る場面で、下請の原発作業員がアラームメータを身につけずに線量の低いところにおいて作業をしていることがあった、東京電力の社員は作業がきちんと行われたかを最終確認しなければならず先に線量オーバーになっては確認ができないので全部の作業が終わってから入った(38~39ページ)と述べていて、元現場監督の故平井憲夫さんが1990年代に話していた現場作業の実態(作業員は記録上の線量を抑えるために線量計は外して作業している、東京電録の社員は被ばくしないように遠くの線量が低いところに隠れているなど)が裏付けられています。著者自身が現場時代に5年半で合計約100ミリシーベルト被ばくしたけれども退職後東京電力から体調について尋ねられたこともない(39ページ、76~77ページ)ということも書かれています。原子力計画課で安全審査を担当した時期に安全のために多重性を持たせていた機器のうち静的な機器、例えば格納容器スプレイ系のリングが2系統あったのをコスト削減のために1つにしたということが書かれています(48~50ページ)。「そのリングが壊れたら全然水が来なくなりますが、『壊れない』という論理です。そういうものを減らす理屈をこねてコストダウンして本当にいいのか、という思いはありました」(49~50ページ)とされています。そう思ったらその頃に言って欲しかったと思いますけど。玄海原発で問題となった世論誘導(やらせ発言)について、現職の頃自分も現実にやったとも述べています(80ページ)。2002年のトラブル隠しについて小泉訪朝に合わせてプレス発表し扱いを小さくしたことについて、「『東電の広報もやるな』と当時思いました。」(66ページ)という感性ですから、本当の意味での危機感・罪悪感はなかったのでしょうけど。
福島原発後のことについては、東電バッシングでは済まないといい(78~81ページ)、危険性ではなく核燃料サイクルが完結せず放射性廃棄物の処分問題がクリアできないことから原発をフェイドアウト(漸減)していくべきと論じています。東京電力で技術部門におり東京電力と日本原燃で核燃料サイクルを担当していた著者がそういうことの重みはあるものの、福島原発事故後の発言としてはそれほどのインパクトを感じません。
東京電力での過去の話の方が、私には興味深く、そちらの方をもう少し詳しく書いてくれた方がよかったかなと思いました。
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蓮池透 かもがわ出版 2011年9月20日発行