喫煙禁止と子どもの権利尊重が徹底された社会でそれらに反発する市職員が、市庁舎のトイレで隠れて煙草を吸っていたところを、閉め忘れたトイレのドアから入ってきた5歳の少女に見つかって怒鳴って追い出したことから、幼女に対するわいせつ行為の容疑をかけられて転落していく様を描いた小説。
現代社会で正義の名の下に、恐怖政治が進行しているというテーマです。正義を主張する者たち、弁護士とか政治家とかに対する作者の反発が色濃く反映されています。同時に哀れな主人公が志向するのも、喫煙の自由とか子どもは大人に従っていればいいとか、犯罪者に対する偏見とか、昔はよかったふうの懐古趣味的な秩序維持で、共感しにくいものです。
型どおりの聞こえのいい正義を疑ってみることが時に必要とは思いますが、今ひとつ作者の主張にも乗りにくいところが、結末の陰惨さと合わせて、どこか不快な読後感を残す要因となっていると思います。
原題:La petite fille et la cigarette
ブノワ・デュトゥールトゥル 訳:赤星絵理
早川書房 2009年10月15日発行 (原書は2005年)
現代社会で正義の名の下に、恐怖政治が進行しているというテーマです。正義を主張する者たち、弁護士とか政治家とかに対する作者の反発が色濃く反映されています。同時に哀れな主人公が志向するのも、喫煙の自由とか子どもは大人に従っていればいいとか、犯罪者に対する偏見とか、昔はよかったふうの懐古趣味的な秩序維持で、共感しにくいものです。
型どおりの聞こえのいい正義を疑ってみることが時に必要とは思いますが、今ひとつ作者の主張にも乗りにくいところが、結末の陰惨さと合わせて、どこか不快な読後感を残す要因となっていると思います。
原題:La petite fille et la cigarette
ブノワ・デュトゥールトゥル 訳:赤星絵理
早川書房 2009年10月15日発行 (原書は2005年)