文書鑑定と警察の捜査組織(科警研=警察庁、科捜研=都道府県警察)の歴史、筆者識別(いわゆる筆跡鑑定)、印章鑑定、不明文字(改ざん等)鑑定、複製文書鑑識、通貨鑑識などについての歴史と鑑定手法・技術、鑑定事例などを説明した本。
鑑定の手法や事例など参考になることが多く書かれていますが、基本的に著者が科警研、科捜研にいた昭和の時代までのことがほとんどを占めていること、警察の先輩への賛辞・賛美と対照的に学者や「私的鑑定人」(著者も警察を定年退官して1992年に「吉田公一文書鑑定研究所」を開設した以降は民間の鑑定人のはずなんですが)への反発(かなり厳しいトーンの批判)が強い癖のある読み物となっていることが難点に思えました。
印章の鑑定に関して、裁判所や役所では嫌われているシャチハタスタンパー(インク内蔵印)はインクを通す微細な孔が製造法(生ゴムに食塩を混入させ成形後に溶かす)から印章ごとに異なっているため異同識別が可能(113ページ)、他方、印鑑証明書の印影画像は精度が悪すぎて(真正の印影を示すものとして)鑑定に使うことはできない(114~116ページ)などの記述が、私には興味深く思えました。
96ページの竹下登元首相の「念書」と本人が書いた対照筆跡は、本文の記載から見て、説明が逆(96ページでは対照筆跡は左側としていますが、右側の間違い)だと思います。
吉田公一 主婦と生活社 2023年10月13日発行
鑑定の手法や事例など参考になることが多く書かれていますが、基本的に著者が科警研、科捜研にいた昭和の時代までのことがほとんどを占めていること、警察の先輩への賛辞・賛美と対照的に学者や「私的鑑定人」(著者も警察を定年退官して1992年に「吉田公一文書鑑定研究所」を開設した以降は民間の鑑定人のはずなんですが)への反発(かなり厳しいトーンの批判)が強い癖のある読み物となっていることが難点に思えました。
印章の鑑定に関して、裁判所や役所では嫌われているシャチハタスタンパー(インク内蔵印)はインクを通す微細な孔が製造法(生ゴムに食塩を混入させ成形後に溶かす)から印章ごとに異なっているため異同識別が可能(113ページ)、他方、印鑑証明書の印影画像は精度が悪すぎて(真正の印影を示すものとして)鑑定に使うことはできない(114~116ページ)などの記述が、私には興味深く思えました。
96ページの竹下登元首相の「念書」と本人が書いた対照筆跡は、本文の記載から見て、説明が逆(96ページでは対照筆跡は左側としていますが、右側の間違い)だと思います。
吉田公一 主婦と生活社 2023年10月13日発行