過保護に育てられ家のことは何一つしない本好きの少女チャーメインが、大おばの大おじの魔法使いウィリアム・ノーランドがエルフの病気治療を受ける間ウィリアムの家の留守番を任されるが、その家は空間が折りたたまれてあちこちに通じている魔法の家で、チャーメインはウィリアムから読んではいけないといわれた魔法の本を読んで呪文を試すうちに危険な魔法生物ラボックに襲われ、ウィリアムを訪ねてきた少年ピーターやチャーメインのアルバイト申込みを承諾した王宮の人々との間でトラブルを起こし…というファンタジー小説。
基本的には、気が強くて本好きの少女チャーメインが、たまたま居合わせることになったおっちょこちょいで好奇心の強い少年ピーターと繰り広げる魔法系アドベンチャーファンタジーとして読むべき(ハリー・ポッターシリーズの初期のハーマイオニーとロンに近いイメージ)で、ハウルやソフィーは、出てくるし、事件解決に活躍はしますが、中心とは言いにくい。動く城は、添え物的に登場するだけですが、ウィリアムの魔法の家が空間が折りたたまれていてあちこちに通じているという仕組みなのは、動かないものの、「動く城」と共通のアイディアで、その点では「魔法使いハウルと火の悪魔」と通じるものがあります。
一番最初の「登場人物」の一覧にハウルの名がなく、冒頭の「読者のみなさんへ」で「思わぬ姿をとっているハウルの言動には、みなさんもいらいらすること請けあいですよ」と書かれていることから、「アブダラと空飛ぶ絨毯 ハウルの動く城2」でハウルがずっと他の登場人物に化けていたことを思い起こし、ここでもハウルは他の人物に化け続けているのかと思って読んでいたら、登場するやすぐにこれがハウルだと紹介されて拍子抜けします。
「魔法使いハウルと火の悪魔:Howl's Moving Castle」が1986年、「アブダラと空飛ぶ絨毯:Castle in the Air」が1990年に出版され、その後さらに18年を経て2008年になって出版されたこの本。原書にはいずれも Sequel to Howl's Moving Castle(ハウルの動く城の続編)と表示されているので「ハウルの動く城」シリーズと呼んでもいいでしょうけど、「魔法使いハウルと火の悪魔」では物語の中心にいたハウルとソフィーが、「アブダラと空飛ぶ絨毯」や「チャーメインと魔法の家」では事件解決に駆けつける名探偵みたいな位置づけで、役どころがかなり変わってきています。私の目には、かなり無理してシリーズ化してるように見えます。
訳者あとがきでは作者は続編のアイディアを温めていたと思われると紹介しているのに、表紙カバー見返しでは「『ハウルの動く城』シリーズ待望の完結編!」などと打っているのは実にいやらしい。作者が死んでしまった(2011年)以上、続編が書かれないことは確かですが、作者が完結させたという気持ちでないのに売らんかなでこういうコピーをつけるのはどうかと思います(「ミレニアム」でも同じようなことがありましたけど、不愉快でした)。
原題:HOUSE OF MANY WAYS
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:市田泉
徳間書店 2013年5月31日発行 (原書は2008年)
基本的には、気が強くて本好きの少女チャーメインが、たまたま居合わせることになったおっちょこちょいで好奇心の強い少年ピーターと繰り広げる魔法系アドベンチャーファンタジーとして読むべき(ハリー・ポッターシリーズの初期のハーマイオニーとロンに近いイメージ)で、ハウルやソフィーは、出てくるし、事件解決に活躍はしますが、中心とは言いにくい。動く城は、添え物的に登場するだけですが、ウィリアムの魔法の家が空間が折りたたまれていてあちこちに通じているという仕組みなのは、動かないものの、「動く城」と共通のアイディアで、その点では「魔法使いハウルと火の悪魔」と通じるものがあります。
一番最初の「登場人物」の一覧にハウルの名がなく、冒頭の「読者のみなさんへ」で「思わぬ姿をとっているハウルの言動には、みなさんもいらいらすること請けあいですよ」と書かれていることから、「アブダラと空飛ぶ絨毯 ハウルの動く城2」でハウルがずっと他の登場人物に化けていたことを思い起こし、ここでもハウルは他の人物に化け続けているのかと思って読んでいたら、登場するやすぐにこれがハウルだと紹介されて拍子抜けします。
「魔法使いハウルと火の悪魔:Howl's Moving Castle」が1986年、「アブダラと空飛ぶ絨毯:Castle in the Air」が1990年に出版され、その後さらに18年を経て2008年になって出版されたこの本。原書にはいずれも Sequel to Howl's Moving Castle(ハウルの動く城の続編)と表示されているので「ハウルの動く城」シリーズと呼んでもいいでしょうけど、「魔法使いハウルと火の悪魔」では物語の中心にいたハウルとソフィーが、「アブダラと空飛ぶ絨毯」や「チャーメインと魔法の家」では事件解決に駆けつける名探偵みたいな位置づけで、役どころがかなり変わってきています。私の目には、かなり無理してシリーズ化してるように見えます。
訳者あとがきでは作者は続編のアイディアを温めていたと思われると紹介しているのに、表紙カバー見返しでは「『ハウルの動く城』シリーズ待望の完結編!」などと打っているのは実にいやらしい。作者が死んでしまった(2011年)以上、続編が書かれないことは確かですが、作者が完結させたという気持ちでないのに売らんかなでこういうコピーをつけるのはどうかと思います(「ミレニアム」でも同じようなことがありましたけど、不愉快でした)。
原題:HOUSE OF MANY WAYS
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:市田泉
徳間書店 2013年5月31日発行 (原書は2008年)