伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

まちの歴史を読み解く 東京ぶらり謎解きさんぽ

2024-11-27 21:24:56 | 人文・社会科学系
 東京の18のエリア(佃・月島・晴海、八重洲、有楽町、新富町、神田三崎町、神田神保町、千駄木、目黒、池袋、白金、春日、大久保、市谷柳町、四谷、原宿、大崎、一ツ橋、六本木)の地名の由来や町の成り立ちなどについて江戸時代(あるいはそれ以前)から明治、戦後にかけての通史や資料に基づいて、各地域見開き2ページの紹介と3つのテーマ合計8ページで蘊蓄を語る本。
 興味深い話題が多く語られていますが、見開き2ページで左ページは一面絵という構成へのこだわりで、埋め草的なイラストも散見されるのと、高低差を示す地形図で高いところほど緑が濃い図(25ページ、33ページ、49ページ上図、81ページ、89ページ、109ページ、141ページ)と逆に高いところほど緑が薄く白っぽくなる図(49ページ下図、65ページ、99ページ、113ページ、121ページ、129ページ、153ページ)が混在していて直感的に混乱するのが残念に思えました。


岡本哲志 エクスナレッジ 2024年7月2日発行
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男も知っておきたい骨盤の話

2024-11-26 23:14:31 | 実用書・ビジネス書
 骨盤と肩甲骨が周期的に開閉している(1日の朝晩と1月の2週間かけての開→閉、2週間かけての閉→開)こと、しかし現代人が歩かなくなるなどの生活環境の変化でそれがスムーズに行かなくなっていること、著者が開発した骨盤体操をしてインナーマッスルを鍛えるべきことを説いた本。
 ここでも(昨日の腰痛・股関節の痛みは「手術なし」で消える!に続いて)腰腸筋…で、腰腸筋を鍛える運動で開き座り寝(仰向けに寝て足の裏を合わせ膝を開く)をして膝が床から浮かないように、正座で寝(正座したまま上体を後ろに倒して仰向けに寝る)をして膝の下と背中の上部はできるだけ床から浮かないように(25ページ)というのですが、その状態ではとても膝が床につかない。私の骨盤がフリーズ(固着)しているのか…でしょうね。
 肩甲骨の方の上インベーダー(仰向けに寝て両肘を脇につけて直角に曲げ肘と手の甲が床から浮かないように)も下インベーダー(仰向けに寝て両肘を肩のラインに上げ直角に下に曲げて肘と手のひらが床から浮かないように)も(103ページ)できない。トホホ…


寺門琢己 幻冬舎新書 2006年11月30日発行
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腰痛・股関節の痛みは「手術なし」で消える!

2024-11-25 23:07:38 | 実用書・ビジネス書
 腰痛・股関節痛の原因は背骨(第12胸椎)から骨盤内を通って大腿骨上部の内側につながる大腰筋と骨盤の骨(腸骨)から大腿骨上部内側につながる腸骨筋(合わせて腰腸筋)の疲労・緊張にあり、ここに手を当てる施術で痛みを和らげたり消すことができると訴える本。
 著者はスポーツ整体院経営者で、椎間板ヘルニアとか脊柱管狭窄症、変形性股関節症などの病名をつけて手術をしたがる医師に対して敵愾心を露わにしています。そういった手術や投薬を受けて治らない患者たちが著者の整体院を多く訪れ、著者の下で治っていると言われると一理あるかなとは思いますが、整形外科医が骨しか見ない(筋肉を見ない)という主張の中で「レントゲンやMRIといった骨しか見ることができない画像検査を行い、異変を探し、そこに痛みの原因を求めようとします」(24ページ)と言われると、えっ?と思います。レントゲンは骨しか見えませんが、MRIって筋肉を見れないんでしたっけ…


鶴田昇 現代書林 2024年10月18日発行
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リスペクト-R・E・S・P・E・C・T

2024-11-24 23:11:12 | 小説
 ロンドンのホームレス用ホステル(シェルター)ザ・サンクチュアリから退去要求を受けたシングル・マザーたちが抗議運動を始め、長らく放置されていた無人の公営住宅を占拠し、行政に住宅政策の変更を迫るという小説。
 実在の運動(FOCUS E15運動、カーペンターズ公営住宅の空き家占拠・解放活動)に着想を得たフィクションだそうです。
 活動経験のないシングル・マザーたちが、古い活動家(日本でいえば60年安保世代くらいでしょうか)のアドバイスを受け、周囲の低収入労働者層の住民の支持を受け運動を拡げていく様子が好感できます。
 「都市部では住宅は不足していません。住宅で儲けようとしている企業や団体のせいで、人が住める家が不足しているだけです。この公営住宅が空き家のまま放置されていたのも、売却交渉がうまくいかなかったから。いつでも交渉が成立したら売れるよう、区はここを無人のままにしておきたいんです。(略)人間よりも不動産売買の交渉のほうが大事だと思われている。ホームレスをホステルから退去させるのも同じ理屈です」(173ページ)という主人公ジェイドの言葉が状況をよく表しています。
 2012年まで空き家占拠が犯罪にならず、運動家が空き家をアジトとし、スクウォッティングと呼ばれていた(72ページ)イギリスの社会とその意識を背景とするもので、日本人には、そのような状況があっても他人の所有物を占拠することへの違和感があり、作者は日本人新聞記者史奈子にそれを語らせています。その史奈子が次第に運動に溶け込んで理解を深めていくという構成で、それは巧いなと思います。もっとも、その日本人の所有権不可侵的な意識も、戦後すぐの労働運動が昂揚した時期に自然発生的に始まった工場占拠・生産管理闘争が厳しい弾圧で叩き潰されずに勝利してその運動が引き継がれていたら、まったく違ったものとなっていたのではないかとも思うのですが。


ブレイディみかこ 筑摩書房 2023年8月5日発行
「ちくま」連載
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わたしたちに翼はいらない

2024-11-23 22:38:51 | 小説
 学級カーストの上層にいた、今も人を見下すことが習い性になっている性格が悪くてそれを自覚していない中原大樹・莉子夫婦とその友人住吉美南、その同級生で大樹にいじめられ屈辱感を味合わせられそれを引きずる園田律、中原と住吉と同じ保育園に娘を預けているやはりいじめられた過去を引きずる佐々木朱音らが絡む日々を描いた小説。
 タイトルは、朱音が小学校でいじめられ校舎から飛び降りて骨折して休んだところへ訪ねて来て朱音の話を聞き、「犀の角のようにただ独り歩め」「雲に届くように高く飛びなさい。きみには翼があるんです」と言って去った教師に対して大人になっても反感・違和感を持ち続ける佐々木朱音の心象(199ページ)から採られています。もちろん人それぞれですけど、青春ドラマでの理解者というか一風変わった独自の大人に感銘してしまうような私たちおじさん世代は、もう若者には理解されないのだなという哀感を持たせる作品のように思えました。


寺地はるな 新潮社 2023年8月20日発行
「小説新潮」連載
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字幕翻訳家という仕事

2024-11-22 00:19:03 | 実用書・ビジネス書
 洋画や海外ドラマに字幕をつける字幕翻訳家の仕事を紹介し、字幕翻訳の技術等について解説する本。
 動画配信サービスが増えている現在、「字幕翻訳のスキルのみでも確かな実力をつけることができれば、それだけで受けきれないほどのお仕事を頼まれる可能性もあります」(19ページ)というのですが、「字幕翻訳を本業にするなら、月収30万円以上も十分に可能です」(180ページ)って…それなりにスキルを身につけて本業にしても月収30万円というのが「可能」という程度では、職業としての魅力はかなり厳しいように思えます。
 字幕翻訳はAIが苦手な「感情を伝える」仕事だから、「そう考えると、AIが字幕翻訳をできるようになるとはとても思えません」(59ページ)、「安心してください!AIが字幕翻訳のお仕事を奪うのは、まだまだ先の話でおそらく100年以上はかかります」(55ページ)と。映像翻訳(字幕翻訳)スクールの代表者としての営業トークでしょうけれども、ずいぶん壮大に言い切っていますが、大丈夫なんでしょうか。


三村拓史 セルバ出版 2024年8月30日発行

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学級担任の一日 朝から放課後までの学級経営ルーティン

2024-11-21 23:51:18 | 実用書・ビジネス書
 元小学校教師で現在は「学級経営コンサルタント」の著者が小学校担任が学級のルーティンをうまく回していくコツを説明する本。
 小学校教師の過重労働、疲弊を感じさせずに、子どもたちの自主性を育てながら子どもたち同士でうまく役割分担して教師がいなくてもある程度回るようなシステムを作り上げて行くことを勧めてその方法を書いているという本です。
 小学生が素直に生き生きと話し係の仕事や行事を楽しんでやっていく様子が、著者の経験から描き出されていて、読んでいて微笑ましく、ホッとします。
 話を聞いてもらうために「学級が静寂をつくれるかどうかは学級経営の生命線といっても過言ではない」「ここだけは何があっても曲げてはならない。『一人でも聞いていない子どもがいるうちは一切授業を進めない』、それぐらいの強い気持ちで臨もう」(68~69ページ)とか、「子どもに授業の定刻開始を求めるのなら、教師は授業の定刻終了を心がけるべきだ」「時間を守れる子どもを育てたいのなら、『時間を守りましょう』という言葉よりも担任が態度で示す方が何倍も効果がある」(76~77ページ)とか。至言ではありますが、実行は…


宮澤悠維 学事出版 2024年7月16日発行

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数式のない数学の本

2024-11-19 23:36:03 | 自然科学・工学系
 数学にまつわる歴史や確率、統計について解説した本。
 前書で、数式なしに数学の知識を得るという目的に合う「そのような本は世界のどこにも存在せず、それはいま読者が手にしている本書だけということになります」(8ページ)と力んでいるのですが、書かれている内容は、数学者の人物に焦点を当てた数学の歴史と、統計や確率について著者が語りたいエピソードというところで、現代社会で数学が果たしている役割とか、その未来像とかがあまり語られていないように思えました。
 後半では、AIは人間の脳を超えられない人工無能だ(112~119ページ)とか、地震学・地震予知に対する罵倒(152~159ページ)とか、著者が「非常に好戦的人物で、誰とでもトラブルを起こしたらしい」と紹介している(178ページ)ロナルド・フィッシャーもどきの書きぶりが目につき、そこを好むかどうかで読後感が大きく分かれそうです。


矢沢サイエンスオフィス編著 ワン・パブリッシング 2024年9月30日発行
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獄中日記 塀の中に落ちた法務大臣の1160日

2024-11-18 23:51:34 | ノンフィクション
 公職選挙法違反(買収)で懲役3年の実刑判決を受けて服役した元法務大臣の著者による獄中日記。
 法務大臣経験者の獄中日記ということなので、体験した刑務所・拘置所の処遇の実情と、霞ヶ関で上から見ていた/聞いていたこととのギャップが語られるのかと期待して読みました。そういう記載がまったくないというわけではないのですが、この本の半分くらいは事件についての言いわけと妻案里の無実の主張、検察批判、マスコミ批判、そして安倍晋三への追従・礼賛です。刑務所の処遇についても、刑務官には苦労を労い感謝することが中心でいわば優等生的な文章に満ちています。
 処遇関係では、「思い起こせば、喜連川に移ってから、受刑者の処遇改善について先輩や同僚の国会議員にずいぶん助けていただいた」(236ページ)と、まぁ国会議員が官庁に注文をつけるのはいつもの仕事で、それで刑務所の処遇が本当に改善されるのならそれはいいことと思えますが、ここで出てきているのは元法務大臣、国会議員が収監されているからということで圧力がかけられ特別扱いされたということに見えます。仮釈放前の2週間、ふつうは同衆と共同生活をするのにいざこざが起こりがちということで特別に1人で過ごすことになった(273~274ページ)など特別扱いされていたわけですし。そのことへの疑問は何ら語られません。
 元法務大臣の獄中日記としてよりも、今後の復活・政治生活のために書かれた政治家本として読んだ方がいいかと思います。


河井克行 飛鳥新社 2024年6月30日発行
月刊「Hanada」連載
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AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告

2024-11-17 22:12:59 | 自然科学・工学系
 テクノロジー開発、特に自律学習型のAIと合成生物学のリスクの巨大さを指摘し、その開発の封じ込めの必要性を訴える本。
 最初の3章約350ページは、テクノロジーの発展の歴史、その恩恵とそれ故にその開発や利用を押しとどめることの困難さが、手を替え品を替え語られています。著者の危機感の共有と実行の困難さを説得力を持って語るためではありましょうが、本題に入る前が長すぎるように思えます。これを50ページくらいにしてくれると、ずいぶんと読みやすい本になると思うのですが。
 自由な開発の結果誰もが容易に利用できることで悪意ある者による破壊的な行為や善意者でもミスによる取り返しのつかない行為がなされるリスクと、それを禁止するための全面的な監視社会の間で、どうやって行けばよいのかという困難な問題について、著者はいくつかの提言をしています。技術的な安全性確保・制約、現在のコピー機やプリンターに紙幣の複写や印刷を禁ずる技術が取り入れられている(381ページ)とか、すべてのDNA合成機を安全で暗号化された集中型システムに接続し病原性配列の有無を検査するプログラム(386ページ)などはなるほどと思います。開発者の許認可制とか現代版「ヒポクラテスの誓い」を作るなどさまざまなことがいわれ、前向きに検討すべきと思いますが、前半でテロリストの脅威が強調されたことをみるとそれで対応できるのかとも思います。
 今後の10年間で「数十億の誰もが平等に、最高の弁護士、医師、戦略家、デザイナー、コーチ、経営アシスタント、交渉人として頼れるACIにアクセスできる」(256~257ページ)って、AIに真っ先に代替・駆逐されるのは弁護士なのか…


原題:THE COMING WAVE
ムスタファ・スレイマン、マイケル・バスカー 訳:上杉隼人
日本経済新聞出版 2024年9月25日発行(原書は2023年)
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