独自に分析・集計した社会・経済指標を用いながら、概ね18世紀以降平等に向けての歩みは漸進し第1次世界大戦期から1980年代まで比較的急速に進んだものの1980年代以降その歩みが停滞ないしは後退しているという認識を示しつつ、平等に向けてのさらなる前進のための提言をする本。
最富裕層10%(時に1%、0.1%)と最貧層50%、その中間の40%に区分した資産・所得を中心とした著者が独自に分析・提示する指標に基づく主張が、魅力的・説得的であるとともに、一般に使用されているものでないためにその意味するところの解釈やデータそのものの信頼度をどう考えるかに悩ましさを覚えます。「社会・経済指標の選択は非常に政治的な問題だ」とし「どんな指標も絶対視すべきではなく、どんな指標を採用するかについては開かれた議論と民主的な比較検討が必要だ」(19~20ページ)という指摘は正しく、著者の自信と運動的な姿勢を示しているのだと思いますが。
現在の格差を、奴隷制による奴隷主の資産蓄積、奴隷解放時の奴隷主への賠償による資産蓄積、納税額による制限選挙下での富裕層に利得が集中する制度の実施・継続といった歴史の残滓でありそれを精算すべきという主張、累進課税とそれによる所得等の再分配を推し進めることで資本主義下でも平等を進めることができ、実際第1次世界大戦期から1980年代には各国でそのような形で教育・保険医療・社会保障などを拡充してきたという指摘、超富裕層に対するほとんど没収に近い税率の累進課税とベーシックインカム・雇用保障・みんなの遺産(国民全員に25歳になったとき平均資産の60%例えば12万ユーロを支給)という提言など、さまざまな刺激に満ちた本です。
原題:UNE BREVE HISTOIRE DE L'EGALITE
トマ・ピケティ 訳:広野和美
みすず書房 2024年9月17日発行(原書は2021年)
最富裕層10%(時に1%、0.1%)と最貧層50%、その中間の40%に区分した資産・所得を中心とした著者が独自に分析・提示する指標に基づく主張が、魅力的・説得的であるとともに、一般に使用されているものでないためにその意味するところの解釈やデータそのものの信頼度をどう考えるかに悩ましさを覚えます。「社会・経済指標の選択は非常に政治的な問題だ」とし「どんな指標も絶対視すべきではなく、どんな指標を採用するかについては開かれた議論と民主的な比較検討が必要だ」(19~20ページ)という指摘は正しく、著者の自信と運動的な姿勢を示しているのだと思いますが。
現在の格差を、奴隷制による奴隷主の資産蓄積、奴隷解放時の奴隷主への賠償による資産蓄積、納税額による制限選挙下での富裕層に利得が集中する制度の実施・継続といった歴史の残滓でありそれを精算すべきという主張、累進課税とそれによる所得等の再分配を推し進めることで資本主義下でも平等を進めることができ、実際第1次世界大戦期から1980年代には各国でそのような形で教育・保険医療・社会保障などを拡充してきたという指摘、超富裕層に対するほとんど没収に近い税率の累進課税とベーシックインカム・雇用保障・みんなの遺産(国民全員に25歳になったとき平均資産の60%例えば12万ユーロを支給)という提言など、さまざまな刺激に満ちた本です。
原題:UNE BREVE HISTOIRE DE L'EGALITE
トマ・ピケティ 訳:広野和美
みすず書房 2024年9月17日発行(原書は2021年)