伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ヒバクシャになったイラク帰還兵

2006-08-30 22:12:13 | ノンフィクション
 イラク戦争で使用された劣化ウラン弾で戦闘終了後に被曝して偏頭痛やむくみに悩まされ帰国後身体障害児が生まれた米兵の話を中心に劣化ウラン弾問題を扱った本です。

 劣化ウランは、原発の燃料や核兵器の製造のためのウラン濃縮で生じる廃棄物ですが、密度が大きい(重い)ため爆弾に用いると貫通力が高く、戦車の装甲や塹壕を打ち抜く目的で兵器として使用されています。爆弾として発火・破裂した後にはウランの微粉末は飛散し、それを吸い込むと体内で放射線被曝することになります。
 もちろん、被曝の被害はイラクの住民により多く生じるわけですが、米軍等の外国からの駐留軍にも被害が生じます。そのことをアメリカで訴え始めた数少ない米兵を切り口にしたというわけです。
 前半が被害を訴える米兵の話で、後半は劣化ウラン弾とイラクでの被害についてのレポート4本で構成されています。そのあたり、バランスを取ったのでしょうけど、やっぱり、前半の方が具体的な話だし、米軍・政府の反応もリアルで読ませます。


佐藤真紀編著 大月書店 2006年8月4日発行

朝日新聞が10月15日の朝刊に書評を掲載しました。
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ユーミン「愛」の地理学

2006-08-29 23:14:21 | エッセイ
 松任谷由実の歌を題材にしたエッセイですね。
 歌の解説・解釈本かと思って読んだのですが、また形としては解釈の形の部分が多いのですが、その形を借りて著者が言いたいことを言ってるんだと、私は思いました。
 失恋を至福の時に作り替えるとかいうあたりの抽象論は、まあ、ユーミン解釈として納得できるんですが、それぞれの歌の解釈には、言い切りされても、そうかなあと思うことがしばしば。
 「国民的歌手」になってしまったユーミンには、10人いれば10人の読み方・ユーミン論があるのでしょうけど。


蔦きうい 河出書房新社 2006年8月30日発行
(この発行日って・・・明日・・・)
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恐怖の病原体図鑑

2006-08-28 08:31:28 | 自然科学・工学系
 病原体となるウィルス・細菌・真菌・原虫を解説した本。
 1つについて原則1頁、写真付き、概説・臨床像・治療・予防が書かれていて、ざっと見るには手頃。

 髄膜炎菌は一旦定着すると人の免疫系に対して何らかの有益な点があるのではないかと考えられる(120頁)とか、チフス菌はこれまで治療に使われてきたほとんどの抗菌薬に対して耐性となってきており地域によってはもはや使うべき抗菌薬が全くないという時代に迫りつつある(129頁)とか、興味深く読みました。

 でも、写真に全く説明がないのが残念。倍率とか色とか(染色して撮影しているはずだから本来の病原体の色とは違うはず)に何の言及もないのは不親切だし、せっかく写真を載せるなら見えている構造について説明がほしい。
 そして、一番最初に登場するプリオンをウィルスに分類していて、それに説明がないのも違和感を持ちました。


原題:MICROTERRORS
トニー・ハート 訳:中込治
西村書店 2006年7月13日発行 (原書は2004年)
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いのちのキーワード 免疫

2006-08-27 08:52:46 | 自然科学・工学系
 免疫についての解説本。

 理科好きの中高生向けに発刊された「東京理科大学・坊ちゃん選書」の第1号ですが、中高生に読ませるのはかなり無理があるように思えます。第1章あたりでは、その辺を結構意識していますが、導入部が終わったら、化学物質や専門用語が並びます。

 免疫関連の分野を幅広く取りあげていて教養的にはいいですし、まだわからないことが多いんだなあということがわかるのもいいかなと思います。
 最近のアレルギーの増加について、細菌感染の危険性が減ったことがアレルギーの原因となる抗体IgEの増加につながっているのでは・・・(まだはっきりはわかっていないと書いてありますが:104頁)という指摘や、腸管粘膜への細菌の頻繁な侵入が適度な刺激になって防御系のトレーニングになっている(157~158頁)とかいう話は興味深く読みました。細菌はなくせばいいってもんじゃないんですね。


穂積信道 オーム社(東京理科大学・坊ちゃん選書) 2006年6月15日発行
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夏と夜と

2006-08-26 16:43:47 | 小説
 妻とともに服飾デザイナー(パタンナー)をしている僕(平原君)が、専門学校時代に3人で楽園を作ろうと話し合っていた仲間の和泉みゆきと再会し、死んでしまったスウちゃんを含め、3人の過去と妻との現在が交差する小説。

 最初、目次が「夏」「夜」と記載されて初出も別なので短編2つと思って読んでいました。それで、3人の話も妻との関係も中途半端なところで、僕が草むしりするところで「夏」が終わったときには、「え~っ、そりゃないでしょう」って思いました。すぐ始まった「夜」がそのまま話が続いていたのでホッとしましたが、でも、最後まで読み終わっても、結局、3人の話と妻との関係はなんかうやむやのままでオカルトっぽく、あるいは観念的に、ぶん投げてしまったような形で終わり、やっぱり「え~っ、そりゃないでしょう」って読後感でした。

 前半の専門学校時代の回想は、青春・恋愛小説っぽくてよかったし、後半からオカルトっぽくなってきても、途中までは不思議な三角・四角関係のお話として楽しめましたけど。最後、話の途中でぶった切られて、あ~あって感じ。ちゃんと結末つけてほしいですよね。
 あと、平原君の言葉づかいが、妻にも昔の仲間にも、ずっと「ですます」でしゃべったり、和泉みゆきには本人に対して「和泉みゆき」って呼んだり、なんか変。もちろん、作者は意図的にやっているんでしょうけど、読んでて最後まで違和感持ち続けました。


鈴木清剛 角川書店 2006年7月31日発行
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ケセランパサラン

2006-08-25 22:56:39 | 小説
 不器用で覇気がない若者4人のそれぞれの友人関係・家族関係・異性関係(恋人未満)を基本的にご近所の狭い社会内で綴った短編4つを並べた小説です。あまり大きな事件も大きな展開もなく、ほのぼの・のほほんとした小説が好きな人向けです。
 無気力度の高い「ちまきのこと」から少しずつ前向きになって、3つめの「フユヲとハルヲのこと」あたりで結構明るめになる構成ですが、4つめの「剣のこと」がちょっと毛色が違って(普通の不倫って感じ)、全体の構成としてはクエスチョン。「きらら」への連載を1つの単行本にまとめたもので、ひょっとしたら全体の構成は考えてなかったのかも知れませんが。私としては、3つめまでで終わった方が読後感がいいと思いました。

 題のケセランパサランは、スペイン語で(Que seran pasaran)なるようになるという意味だそうですが、作品中では幸せを呼ぶ不思議な生物(タンポポの綿毛みたいなヤツ)として登場します(197頁)。特に表題になるほどの存在感はないんですが。


 発行日より前に感想を書くことをノルマに読みましたけど・・・
 この発行日、先日付にし過ぎ。


大道珠貴 小学館 2006年9月1日発行
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好きです!小笠原

2006-08-24 21:42:53 | 趣味の本・暇つぶし本
 小笠原に魅せられたライターたちが綴る小笠原の観光、自然、風俗、歴史、生活などをまとめた本。

 小笠原は陸続きになったことがなく海底から隆起してできたので固有種が多数いたのだけど、外来の山羊とか猫とかに喰われて絶滅のピンチにある種が少なくないとか。小笠原の植物にはトゲがない、アブもブヨもヘビもいない、人を不愉快にさせるものがないんだって(81頁)。うーん。

 小笠原には、裁判所も検察庁もないし、弁護士もいません。弁護士会では、月に1回父島と母島に弁護士を派遣して役場で「小笠原法律相談センター」を開いています。
 東京から船で25時間、一度行くと6日間は帰って来れないという交通事情ですので、若手の弁護士しか事実上行けず、私は二弁の法律相談センターの委員を十数年やっていますが、まだ小笠原の当番はやったことがありません。
 でも、こういう本読むと一度いってみたいなあなんて思ってしまいます。でも、6日間も事務所あけるのはなあ・・・台風で船が欠航したりしたらさらに長期間帰れないリスクもあるし・・・


にっぽん離島探検隊編 双葉社 2006年8月20日発行
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なんで時間がないんだ?

2006-08-23 00:14:01 | 実用書・ビジネス書
 時間のひねり出し方についての読み物です。
 「混んだ電車に乗らない」「本かかってきたその日に読み終える」(本や書類を)「積み上げない」「床にモノを置かない」「出しっぱなしにしない」・・・できません、私には。
 「時間があればきちんとやるはウソ?」はい、ウソです。時間がないときの方がなんとか工夫するし、時間があるとなんとなくのんびり過ごしてしまいがちです、私は。
 テスト前に突然部屋を掃除したくなる理由・・・「人間は何かに集中しようとしたとき、集中できる環境を作ろうと無意識に片付け始めるのではないかと思うのだ」。私は逃避行動+心の準備(自分に言い聞かせる時間稼ぎ)と思ってましたが。

 まあ、そうだよねと思う部分、そうかなあと思う部分、半々くらいかなあ。目から鱗が落ちるようなハッとする指摘はありませんが、電車の中でなんとなく読むにはいいかも。


菅野結希 自由国民社 2006年4月24日発行
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空の香りを愛するように

2006-08-22 06:42:49 | 小説
 騙されて引っ張り込まれた合コンで睡眠薬を飲まされて集団レイプされ正体不明の生物を孕みHIV感染の可能性も告知された主人公が、恋人に告げずに別れることを決意し犯人への復讐を決意するが、正体不明の青年の示唆を受けながら恨みを克服し恋人と生きようと決意するに至る小説。

 正体不明の青年の「鳥の影から逃げないで。逃げたら、一番大切なものを失うから。その眼で鳥の影の正体を見ることができれば、影は消える。」(54頁)がキーワードとなっています。ストーリーの中では鳥の影は加害者のこと、加害者の力を過大視するなということのように読めましたが、エンドで「心の弱さや恐怖」(173頁)、「鳥の影は恐怖に駆られた自分の弱い心が作り出す、憎しみと破壊を望むもう一人の自分」(174頁)とされています。

 加害者を憎み復讐で自分の人生を費やすより自分の人生を前向きに生きようというスタンスは、理解できますし、現実的とも思えます。弁護士としては、その辺ちょっと複雑な思いはありますけど。
 でも、同時に、レイプ犯のイツキが逃げ延びるのもなにか割り切れない気持ちが残ります。
 また、一緒に被害を受けた被害者がナイフを振りかざしてイツキに襲いかかったときの主人公の対応は、今ひとつ被害者が持つ復讐心への共感を感じさせません。
 この場面に限らず主人公の態度は、終始無感動というかさめた感じですが。同時にその意味で「前向き」って感じもしませんが。
 もっとも、イツキが逃げ延びるのが気に喰わんといっても、もろに勧善懲悪的なお話だとそれはそれで、ファンタジーならともかく、小説としてはおもしろくないとも思ってしまうわけで、読者としてわがままなだけともいえますけど。


桜井亜美 幻冬舎文庫 2006年8月5日発行 (単行本は2004年)
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いちばんわかりやすいバドミントン入門

2006-08-21 20:20:52 | 実用書・ビジネス書
 元全日本チャンピオンによる写真を多用したバドミントン解説書。
 私も中学・高校の時にバドミントンやってたもんでちょっとうるさくいうと、写真を多用してわかりやすいんですが、ハイバックでフォロースルーの写真がなくてわかりにくい(15頁)のと、バックハンドの時にはグリップを持ち替えることと何度か書いている(10頁、14頁等)のにフォアハンドとバックハンドのグリップの違いをはっきりわかりやすくした写真や図がないのが残念。
 グリップについていうと、いろいろなショットの写真があるので気がついたんですが、著者(陣内選手)はショットによって結構グリップを変えています。フォアとバック、クリアやロビングとドライブ・プッシュでグリップが違うのはもちろん、深いところからのショットでも写真を見る限りクリア・スマッシュとドロップ・カットでグリップが変わっています。相手に見破られないよう同じフォームから打つことになっているんですけど・・・。
 バドミントンではイースタングリップ(包丁を持つようにラケット面を垂直にした状態で握る)がスタンダードなんですが、初心者にはウェスタングリップ(ラケット面を水平にした状態で握る)を勧めている(11頁)のも、ちょっとショック。イースタングリップは確かに最初慣れないと振りにくいんですが、ウェスタングリップはシャトル(羽根)に当てられても手首が使いにくいんで文字通り羽根つきレベルで止まってしまうと思います。

 スマッシュの初速が男子のトップレベルで時速330km、女子で300kmを超える(42頁)というのも時代の違いを感じました。私がバドミントンをしていた頃は女子では相沢マチ子選手の新幹線スマッシュというのが売りで時速200kmくらい、男子のトップクラスで時速250kmくらいと言われてました。そのころはまだカーボンシャフトが出始めの頃でした。用具の進歩なんでしょうか。
 バドミントンでもラリーポイント制が導入された(2006年からだそうです:120頁)のも知りませんでした。やはり時代の変化に取り残されてますね。


陣内貴美子 大泉書店 2006年7月29日発行
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