「ジウⅢ」の歌舞伎町封鎖事件から6年後、警視庁本庁の捜査1課から新宿警察署強行犯1係長に異動となった東弘樹警部補の元で、歌舞伎町1丁目町会長の心不全による急死、歌舞伎町商店会長の失踪と不審な事件が続き、新宿区長だった父が心不全で急死したことに無念の思いを持ち続ける巡査小川幸彦、フリージャーナリストの上岡慎介らが調査を進めるうちに、歌舞伎町を浄化する殺し屋集団「歌舞伎町セブン」とその中心人物と目される「欠伸のリュウ」の存在が歌舞伎町で広く取りざたされていることを知り…という展開のアクションサスペンス小説。
まったくの無法地帯では困るが、といって厳しい取り締まりがなされたのでは街が成り立たない歌舞伎町という存在をめぐり、グレイゾーンを保ちながら目に余る悪を始末する、アウトローのヒーローとして「歌舞伎町セブン」を設定し、針で痕跡を残さずに相手を殺す「欠伸のリュウ」が活躍するというのは、私のようなおじさん世代には「必殺仕掛人」(1972年)を思い起こさせます。悪人に殺された人・遺族の恨みを晴らすためにその悪人を殺す仕掛け人たちは、かつて庶民の人気を呼び、テレビ番組として続編が繰り返し制作されて長期シリーズとなりましたし、針で「ツボ」を刺して殺人と見せずに殺す藤枝梅安(緒方拳)の斬新さは強く印象に残っています。それだけに、この作品の基本設定は、そのパクリにしか見えません。
しかも、悪人を、さすがにジウⅢが話を大きくし過ぎて(中途半端な大きさとも言えますが)荒唐無稽に過ぎると感じたのか、歌舞伎町をめぐる暴力団や強欲で無情の経営者たちレベルにとどめているため、必殺シリーズ的な設定への共感を持てても悪人のしょぼさでやはり中途半端感があります。
この作品も、比較的落ち着きのあるバー「エポ」のマスター陣内陽一、東弘樹警部補、上岡慎介あたりと、この作品では一応正体が明かされないツッパリキャラのミサキなどのキャラと人間関係のしみじみ感を読むという方がよさそうに思えます。
誉田哲也 中公文庫 2013年9月25日発行(単行本は2010年11月)
まったくの無法地帯では困るが、といって厳しい取り締まりがなされたのでは街が成り立たない歌舞伎町という存在をめぐり、グレイゾーンを保ちながら目に余る悪を始末する、アウトローのヒーローとして「歌舞伎町セブン」を設定し、針で痕跡を残さずに相手を殺す「欠伸のリュウ」が活躍するというのは、私のようなおじさん世代には「必殺仕掛人」(1972年)を思い起こさせます。悪人に殺された人・遺族の恨みを晴らすためにその悪人を殺す仕掛け人たちは、かつて庶民の人気を呼び、テレビ番組として続編が繰り返し制作されて長期シリーズとなりましたし、針で「ツボ」を刺して殺人と見せずに殺す藤枝梅安(緒方拳)の斬新さは強く印象に残っています。それだけに、この作品の基本設定は、そのパクリにしか見えません。
しかも、悪人を、さすがにジウⅢが話を大きくし過ぎて(中途半端な大きさとも言えますが)荒唐無稽に過ぎると感じたのか、歌舞伎町をめぐる暴力団や強欲で無情の経営者たちレベルにとどめているため、必殺シリーズ的な設定への共感を持てても悪人のしょぼさでやはり中途半端感があります。
この作品も、比較的落ち着きのあるバー「エポ」のマスター陣内陽一、東弘樹警部補、上岡慎介あたりと、この作品では一応正体が明かされないツッパリキャラのミサキなどのキャラと人間関係のしみじみ感を読むという方がよさそうに思えます。
誉田哲也 中公文庫 2013年9月25日発行(単行本は2010年11月)