小学生の時に父を亡くしたパパッ子の中学2年生今里杏が、母が恋人との間の子を流産して大泣きしている日に学校をさぼって行った図書館がお休みで茫然としているときに出会った、中年女性作家小椋佐代子とともに、1975年のバス転落事故で死んだ佐代子の中学の教師の死をめぐって調査するうちに、杏は大好きだった父との想い出を整理するとともに母の人生への理解を深め、佐代子は死んだ教師への思いと当時の事情や事故の関係者への思いを整理していく青春・ノスタルジー小説。
1975年の青木湖のバス転落事故という現実の事故を扱う小説ですが、ありがちな事件小説ではなく、あとがきによれば実際に作者の中学時代の教師がその事故で亡くなっていて、作者自身の恩師への思いを綴った小説のようです。
作者が私とほぼ同じ年ということもあって、出てくる1970年代の描写のリアリティがツボにはまります。「白い恋人たち」がグルノーブルオリンピックの記録映画のテーマソングだとか札幌オリンピックで日本がジャンプでいっぱい金メダル取ってとか、さらにはホイチョイ・プロのというか原田知世の「私をスキーに連れてって」まで登場(135~137ページ)。そしてそれは、当然のことながら中学生の杏にはちんぷんかんぷん。60年頃の生まれには、ノスタルジーと世代の差を感じさせるところです。こういう話、中高生は、私たちが戦前や戦中の話を聞くのと同じレベルで昔話として聞くんでしょうね。本来想定している読者層にはリアリティを感じにくく、中高年には自分の歳を感じさせるという感じです。
久美沙織 理論社 2010年1月発行
1975年の青木湖のバス転落事故という現実の事故を扱う小説ですが、ありがちな事件小説ではなく、あとがきによれば実際に作者の中学時代の教師がその事故で亡くなっていて、作者自身の恩師への思いを綴った小説のようです。
作者が私とほぼ同じ年ということもあって、出てくる1970年代の描写のリアリティがツボにはまります。「白い恋人たち」がグルノーブルオリンピックの記録映画のテーマソングだとか札幌オリンピックで日本がジャンプでいっぱい金メダル取ってとか、さらにはホイチョイ・プロのというか原田知世の「私をスキーに連れてって」まで登場(135~137ページ)。そしてそれは、当然のことながら中学生の杏にはちんぷんかんぷん。60年頃の生まれには、ノスタルジーと世代の差を感じさせるところです。こういう話、中高生は、私たちが戦前や戦中の話を聞くのと同じレベルで昔話として聞くんでしょうね。本来想定している読者層にはリアリティを感じにくく、中高年には自分の歳を感じさせるという感じです。
久美沙織 理論社 2010年1月発行