伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

もっと知りたい歌川広重 生涯と作品

2007-07-31 08:19:54 | 人文・社会科学系
 東海道五十三次で知られる浮世絵師広重の入門書兼解説付き画集。
 広重は下積み時代が長かったが故にいかにすれば売れるかを考え抜き、その結果主張を抑えた叙情的な絵を量産して幕末の売れっ子絵師になったそうです。そのあたり癖の強さ故に短期間に飽きられたという北斎との対比で語られています(18頁等)。
 広重が現実に旅をして書いたのは概ね関東地方で(58頁)後はまだ見ぬ風景を種本や想像で補って書いたそうです。広重の得意とした名所絵も実際には江戸の風景画が多いとか。
 西洋絵画と同様、浮世絵もベロ藍などの新たな絵の具の発掘が躍進につながった(24頁)という話も興味をそそられました。
 広重といえば風景画ですが、鳥獣画もわりと書いているそうで、かつて切手ブームで珍重された「月に雁」も広重だったんですね(46頁)。


内藤正人 東京美術 2007年6月30日発行
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エリートセックス

2007-07-28 16:50:56 | 実用書・ビジネス書
 一世を風靡した売れっ子AV男優によるセックス論。
 テーマはセックスなんですが、テクニックの話ではなく、基本的に精神論で、全体としてはむしろ人生論とかビジネス書の雰囲気。知識やテクニックはむしろ邪魔になる、相手にあわせることが大事、相手の気持ちを読む読解力と相手の反応を見る観察力が何よりも大事だそうです。これってお客様へのセールスに置き換えるとそのままビジネス書です。
 アダルトビデオなんか見るな、真に受けるなって(51~53頁)って、そりゃそうだけどAV男優からそう言われても・・・。
 現場の経験からだそうですが、抗うつ剤を飲むとホルモンバランスが崩れて妊娠していなくても母乳が出る(60頁)って、知りませんでした。こういうことで勉強になるのは意外。


加藤鷹 幻冬舎新書 2007年5月30日発行
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サリー・ロックハートの冒険1 マハラジャのルビー

2007-07-28 00:07:14 | 物語・ファンタジー・SF
 1872年のロンドンで、海運会社の経営者の娘として育てられた16歳の少女サリー・ロックハートが、父の謎の死と、インド大反乱の中で所在不明となった伝説のルビーをめぐる争奪戦に巻き込まれるというストーリーの小説。
 サリーは当時の基準では大胆で自立心の強い女性として描かれていますが、同時に不安やか弱さもあり揺れ動き、周囲の男たちに助けられながらピンチを切り抜けていきます。
 最初は女の子が楽しく読める読書ガイドで紹介しようかと思いましたが、冒険の場面での男たちとの位置関係と最後の資金捻出の場面も父頼みなのでパスしました。
 そういう視点はおいて、読み物としてみると、最後のヤマ場のルビーの謎と悪役ミセス・ホランドの関係がちょっとショボい感じですが、ユーモラスなアドベンチャーものとしてはまあいい線かも。
 訳文のセンスがちょっと私と相性が悪いので、読みの流れが悪くてちょっと時間かかりました。


原題:The Ruby in the Smoke
フィリップ・プルマン 訳:山田順子
東京創元社 2007年5月30日発行 (原書は1986年)
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父さんの銃

2007-07-25 08:22:57 | 小説
 17歳で亡命したクルド人映画監督の少年時代の自伝的小説。
 相次ぐ戦争で故郷を追われ平和が来て故郷に戻り苦労して生活を再建したらまた戦争で難民となりと、戦争やフセイン革命に翻弄されるクルド人庶民の様子や、クルド人の独立運動に加わっていく父や兄の下でイラク兵や秘密警察からの暴力や圧力を受ける様子が、少年の視線からユーモアを交えつつも生々しく描かれています。
 ラジオ・モスクワやヴォイス・オブ・アメリカが一方がクルド人の味方をし他方が敵対し、それが政権が交代する度にころりと反転する様子がさらりと書かれているのも、アメリカとソ連のご都合主義をよく表していて辛辣です。
 ただここで描かれているイラクとクルドは1980年代初めまでですから、それを今頃になって(フセイン政権が崩壊してから)出版されても、出す方はそれまで出せなかったのでしょうけど、読む方にはちょっと今さらって感じはします。


原題:Le fusil de mon pere
ヒネル・サレーム 訳:田久保麻里
白水社 2007年6月10日発行 (原書は2004年)
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新・極道の妻たち

2007-07-24 06:57:03 | ノンフィクション
 ヤクザの妻・愛人6人の半生の聞き書き。前書きによれば前回は派手な姐さんに焦点を当てたが今回は波瀾万丈の人生を幾度となく乗り越えながらもそれでも平然として何事もなかったように笑っている姐さんたちに焦点を当てたそうです。
 男の方は覚せい剤の売人や殺人や銃器所持で刑務所に行ったり逃げ回ったり金遣いも荒く愛人をたくさん作っている連中。そういう男に殴られたり、貢いだり、刑務所に行っている間苦労しながら待っていたり自分が身代わりで刑務所に行ったりした女たちがさんざんな目に遭いながら、それでも後悔していないとか言う姿が書かれています。著者の言うとおり、自分ならできないでしょうけど、それを賞賛したり持ち上げたりすることには、身勝手な男に尽くす都合のいい女になり我慢することを奨励しているようで、私は賛成しかねます。
 本筋には関係ありませんが、「懲役3年8ヵ月、執行猶予5年」(175頁)はノンフィクション作家ならチェックして欲しい(執行猶予を付けられるのは懲役3年まで)。


家田荘子 青志社 2007年5月18日発行
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オシムがまだ語っていないこと

2007-07-22 06:27:27 | ノンフィクション
 元朝日新聞のジェフ担当記者が朝日新聞に2004年10月から2005年2月に連載した記事とジェフ番時代の蓄積に2006年12月のオシムへのインタビューと周辺インタビューを加えて構成したもの。書き下ろしになってはいますが、いくつかオシム本を読んだ後では目新しさは感じません。
 オシムが繰り返し日本代表へのメディアの期待が客観的条件を遥かに超えて高すぎることと負けると掌を返す報道ぶりを批判しているのに、メディアの一員としての答がないのもどんなものかと(オシムのその論評を報道すること自体で答えているつもりかも知れませんが)。
 インタビューで、著者が強調している点以外で目についたのは、「日本の多くの選手やその周囲に問題があるとすれば、我慢強くないということ」(182頁)という指摘。忍耐強さが日本人の特徴だったのはいつの話だったか、ちょっと考えさせられました。確かにメディアの論調とか、それに影響されてか若い人たちに我慢強さなんて感じられなくなってますもんね。こういうことは外国人の方が客観的に指摘しやすいものかと思いました。


原島由美子 朝日新書 2007年6月30日発行
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英文の読み方

2007-07-21 07:57:56 | 人文・社会科学系
 英文についてきちんと意味を取って読む(訳する)ための解説・演習本。
 なんとなく読んでいるとわかったようで実はよくわかっていないところを指摘して考えさせるというパターンの繰り返しで、ノウハウとかマニュアルの書き方ではないので、著者の姿勢はわかるけど、結局読んでいて疲れます。
 流し読みでざっと捉えたときに、主語とか代名詞の指す内容とか、言葉の意味(辞書的にはわかっていてもその文脈で適切か)とか、文脈や著者の思いとか、間違って捉えたり読めてなかったりするなあという、自分の英語力不足を再認識するにはよい本かと思います。
 う~ん、今日はHARRY POTTER AND THE DEATHLY HALLOWSが来る日なんですが・・・


行方昭夫 岩波新書 2007年5月22日発行
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リサ・ランドール 異次元は存在する

2007-07-20 22:53:45 | 自然科学・工学系
 私たちの暮らす3次元世界は人間の目に見えない5次元世界に組み込まれているという5次元理論を提唱したハーバード大学教授リサ・ランドールのインタビューで構成した番組(未来への提言)を単行本化したもの。
 私たちの暮らす世界は3次元の膜(ブレーン)のようなものでその外側に5次元世界があり、5次元世界の中には別の3次元世界も存在するという理論で、素粒子が姿を消す(量子力学の世界で当惑するところですね)その行き先が5次元世界と考えるとうまく説明できるというところに始まるそうです(12~19頁)。SF・ファンタジーでおなじみのパラレル・ワールドですね。イリアム・オリュンポス(ダン・シモンズ)のブレーンホールとか、もろこの理論が下敷きって感じ。でも、後半では3次元世界と5次元世界を行き来できるのは重力だけとも言っているし(50~51頁。52頁では他にも行き来できるものが明らかになる可能性もありますとは言っていますが)、ちょっと疑問。やはりこういうお手軽本ではなくちゃんとした本を読むべきでしょうか。
 この理論を提唱した本はNHK出版から刊行予定とかで、その訳者の解説(3次元宇宙が別の3次元宇宙とバネのしくみでつながっているとかうさんくさいことが書かれていますが。90頁)も付けられていてその本を売りたいという姿勢がありあり。こういうのがメディア・ミックスなんですかね。


リサ・ランドール、若田光一 NHK出版 2007年5月25日発行
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新装版 アメリカの日本空襲にモラルはあったか

2007-07-19 22:34:45 | ノンフィクション
 第二次世界大戦中のアメリカの戦略爆撃について、米軍ないし同盟軍内部での意思決定の過程と議論を紹介した本。
 日本への空襲(特に東京と広島)が時期的にも最後であり、被害が大きかったことから、それを論じる部分が多くなっていますが、イタリアやバルカン諸国、ドイツへの爆撃も論じられていて、日本語タイトルは日本での販売用に付けたもの。
 冒頭で20世紀初めの航空隊では死傷率が50%以上にもなっており、絶えざる死の存在は敵国民の殺戮についてのパイロットの感じ方に間違いなく影響を与えたとの指摘(29~31頁)が目につきます。
 現実の第2次世界大戦の過程では、自国の軍人の死傷を減らすことができるのならばそのために敵国の民間人多数が死ぬことを躊躇しない、住宅地の爆撃で労働者の殺戮により生産力を落とし恐怖によって敵国の士気を破壊することができれば戦争が早く終結する(でも実際には無差別爆撃で米軍への憎しみから結束が固まることの方が多い)、戦略爆撃や核兵器で戦争を早く終結できればそうしない場合に死ぬことになった軍人や民間人の命を救ったのだからかえって人道的、人道問題はそれ自体よりもそれによる世論(特に米国内の世論)が米軍の存立に影響しないかという観点から気にするというような考えが繰り返し語られています。日本に対してはバターンの死の行進等の残虐行為が無差別爆撃への抵抗感を減らしたとも。原爆の投下に当たって、京都が外されたのはけっこうギリギリの線だった(202~204頁)ことも紹介されていて意外でした。
 バルカン諸国への無差別爆撃が米軍への憎悪を呼び、女性と子どもを攻撃しないと宣言したソ連に支持が集まった(83~84頁)という話も興味深く読みました。
 戦略爆撃については、ドイツのロンドン空襲や日本の重慶爆撃が先行しているわけですが、アメリカ人が米軍の戦略爆撃をそれらへの報復という書き方ではなく、加害者としての米軍をその内部での議論を分析するという形で書いていることには、一種の潔さを感じます。著者自身は戦略爆撃を悪と断じて書いているわけではないのですが、当事者の言い訳を書き連ねる中で自ずから問題を浮かび上がらせています。ちょっと終盤がくどい感じですし、テーマからして重くて読みにくいですが、原爆投下はしょうがない発言とその顛末を見るにつけ、読んでみる価値があるかなと思います。


原題:Wings of Judgement : American Bombing in World WarⅡ
ロナルド・シェイファー 訳:深田民生
草思社 2007年6月6日発行 (初版は1996年、原書は1985年)
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変身

2007-07-17 07:54:07 | 小説
 自費出版した漫画本を街頭で売っていた不男の少女漫画家がある朝目覚めたら美男に変身していて途端に漫画が売れ出しメジャーデビューを果たして金持ちになる小説。
 この主人公、豊島園の回転木馬とコム・デ・ギャルソンにこだわり、自分は不男でも美にこだわっているので唯一のファン「ゲロ子」は好きになれないという、気持ち悪くて身勝手な奴。それで、美男に変身してからは、憧れていたバイト先の女子大生、美人編集者(陰の編集長)、アイドルと次々とアタックしては、そのオタクぶりなどを気持ち悪がられて振られ、そこで初心に戻ろうとゲロ子に声をかけて今度はゲロ子に変節を詰られるというさんざんな始末。まあ、この身勝手さと思い上がりからすれば当然とも言えますので、同情もできないけど。
 なんか、コメディにしては最後まで変に気取ったオタク的こだわりが(文体も寄与していると思いますが)ざらついて読み心地が今ひとつでした。


嶽本野ばら 小学館 2007年4月3日発行
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